模倣を成功させるために

最後に、「真似び」の大切さ、そして「真似び」を成功に導くためのポイントを整理しておこう。

・異業種の優れた仕組みの模倣は、「真似ぶ」ことの大切さを強調するオープン・イノベーションの定石である。同じ業界に属する大部分の企業は異業種からは学ぼうとはしない。それゆえに、「真似ぶ」ことに成功すれば業界内で競争優位な地位を確保できるだろう。
・相対的に簡単そうにみえる模倣は、うわすべりの模倣となり失敗する。事業の仕組みの部品の導入を考えるときには、容易に採用できるものではなく、導入が極めて困難な部品に注目するといい。その導入は単体では困難であるから、その部品が機能するように周辺の整備が必要になる。これが、よりよい模倣へと企業を導くのである。上手な「つまみ食い」のポイントは、他社が模倣しない部品を「真似ぶ」ことから始めることにある。
・すぐれた仕組みやシステムそのものを導入ではなく、仕組みの本質をつかむ「一般化」を行うことが極めて重要である。一般化されたルールやパターンは、業種特殊性を排除するものとなる。それなので、その採用に対する抵抗は少なくなる。

そして、模倣は、そのままベストプラクティスを真似るという横滑りの模倣ではなく、ベストプラクティスの抽象化によって一般化を行い、一般化されたルールやパターンを通じて得られた知恵やアイデアを自社に当てはめるという具体化をはかるものなのである。

このような「急がば回れ」をすることが、模倣を成功に導く王道である。

加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
神戸大学名誉教授、博士(経営学)。1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
日本の企業経営にデータ主義が必要な理由
なぜ日産の内部監査は機能しなかったのか
キーエンスが年収2000万超を払える理由
サンマルクがスタバほど支持されない理由
トヨタの営業マンが売れないときにやる事