「我慢してほめられる」経験がなかった

2つの家庭は、なぜこうなってしまったのか?

その原因は幼少期の育て方にあると感じている。マサキくんのお母さんは、マサキくんの小学校受験の時に勉強をガンガンやらせ、幼児教室にさえ行けば、あとは何をしてもよしと甘やかしてきた。マサキくんは、幼い時は素直にしたがっていたけれど、小学3年生頃になって自我に目覚めるようになると、親の言うことを聞かなくなってきた。

お母さんが何を言っても、売り言葉に買い言葉。へりくつでお母さんを言い負かし、お母さんも子供をただしてあげることができない。そんなゆがんだ親子関係ができあがってしまったのだ。

失敗の原因は、小さい頃に「我慢をする」というしつけをしてこなかったことが大きい。我慢というのは、食事をする時には家族みんながそろうのを待つとか、欲しいものが手に入らないことを受け入れるとか、人として社会で生きていく上で必要な自制心だ。幼い時に我慢することでほめられるという経験をしてこなかったから、いつでもラクな方へ、自分が心地よい方へと行ってしまい、努力の快感を知るチャンスを逃し続ける。

我慢ができない子は人の話を聞けない

我慢ができない子というのは、人の話を聞けない。じっと座っていることも、黙って聞いていることも疲れるからだ。人の話を聞けない子は、新しい知識を得た時に得られるはずの快感を逃し続ける。どんなに優秀な先生がついても、その話を聞かなければ伸びるはずがない。スポーツでも、音楽でもそうだ。人の話を聞かず、努力もせず自己流でやろうとする人は、伸びていかない。

学力は生まれ持った力と考える親は少なくない。だが、よほどの天才でない限り、多くの人は努力によって伸びるものだ。その努力する力を身につけるために必要なのが、幼少期の我慢だ。

「あなたは勉強さえしていればいい」
「ちゃんと勉強をしたら、○○を買ってあげるね」

そうやって大人の都合で、幼い時に勉強をやらされてきた子は、どこかで必ず伸び悩む。そして、我慢をする経験をしてこなかった子は、ラクな道へと逃げる。ユーチューバーで稼ぐのは、現実的にはとても大変なのに、安易に「ユーチューバーになりたい」という子の思考回路には、幼少期の親の関わりが影響しているように思えてならない。

西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
(構成=石渡真由美 写真=iStock.com)
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