「おもてなし」にブロックチェーン技術

バブル崩壊後、日本が30年近くも低迷している間に、アジア諸国はすさまじい経済成長を遂げ、2018年の世界の手取り給与ランキングでは、日本は韓国(4位)にも負けて8位まで転落してしまっています。

最近の日本は、長年にわたる経済の低迷や、超高齢社会に向かう閉塞感などによって「負けグセ」がついてしまい、経済指標で周辺国に負けてしまうことに鈍感になっているのではないかと感じています。

現在、日本を含め世界では、18世紀後半の産業革命から2000年前後のITバブル時代を経て、ブロックチェーン時代に突入するという、大きなパラダイムシフトが起きようとしています。

昨今の日本の経済では、「効率化」や「コスト削減」ばかりが注目され、日本の経営者の多くは「何かを排除する」ことばかりに気を取られているように感じます。

しかし、ブロックチェーンが可能にするトークンエコノミーでは、そこに参加する人それぞれが互いの価値を評価し合い、それに対する対価を循環させる、「共生の経済圏」を確立することができます。

さらに、いま日本が力を入れている観光の分野でも、このトークンエコノミーの導入は欠かせません。トークンエコノミーの経済圏はトークンでの取引であり、ブロックチェーンを活用した場合、インターネットを通じての決済も容易です。そのため、外国からの観光客にとっても使いやすいといえます。

また、ブロックチェーンの技術を活用することで、日本の特徴である「こだわり」や「おもてなし」という、目に見えにくい価値が評価されやすくなるのではないかと考えています。

評価されにくかったものの価値を高める

良くも悪くもガラパゴス化され、外部とは異なる独自の文化を生み出してきた日本。独自の文化であるがゆえに、国際標準では評価されにくいものや価値を測りにくいものがたくさんあります。

たとえば、京都の寿司職人が静かに握る寿司には、その平均単価をはるかに超える価値があると評価する外国人がいます。1980年代、ソニーの「ウォークマン」は一世を風靡しましたが、その古いタイプのものは、いまやリサイクルショップでも売れないのが現状です。一方で、「当時の定価以上の価値がある」と、トークンで購入する外国人もいるかもしれません。

そういったこれまで評価されにくかったものの価値を、ブロックチェーンを活用して、より高めていけるのではないでしょうか?

工業化によって封印された日本の「こだわり」の価値が、トークンエコノミーによって評価されていく――。このような世界は、ひとりでつくり上げることはできません。多くの人がトークンエコノミーの可能性に気づき、同じ志を持つ仲間を見つけ、試行錯誤を続けながらトークンエコノミーという新しい世界を開拓していく必要があります。

高榮郁(こう・よんう)
ロケットスタッフ代表取締役
ソフトバンク系企業、MOVIDA JAPAN等を経て、2010年、ロケットスタッフを創業。スマートフォン向けマンガアプリを展開し、月間アクティブユーザー50万人のサービスへと成長させる。2018年1月、ブロックチェーンを活用したオンライン広告取引プラットフォーム「ACA Network」を立ち上げる。2018年7月、一般社団法人日本ブロックチェーン広告協会を設立し、オンライン広告業界のために活動中。
(写真=iStock.com)
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