「iPhoneが売れない=アップルはダメだ」は偏りすぎ

このままアップルはiPhoneと共に沈んでしまうのか。昨年までSMBC日興証券で外国株式投資調査担当を務め、現在は起業家の岡元兵八郎氏はいう。

「市場のフォーカスは、目先のiPhoneの売り上げに偏り過ぎている気がします。『iPhoneが売れない=アップルはダメだ』という見方です。しかし、ここ数年、iPhoneの売り上げは年1%程度しか増えていません。一方、アップルはサービス部門(アプリ配信、音楽配信、決済サービスなど)での成長をもくろんでいます。現在サービス部門の売上高は全体の13%ですが、利益率は63%です。アップル全体の利益率の38%を大きく上回っており、売り上げも年10%台後半で増えています」

さらに岡元氏は「アップルには潤沢なキャッシュがある」と指摘する。

「今後、アップルは潤沢なキャッシュを使い、積極的な増配や自社株買いを行うはずです。今後3年で現在の発行済株式数の3分の1を自社株買いするという大規模な株主還元策も予想されています。株価が落ちることは考えづらいです」

そろそろ熱狂できるサプライズが必要ではないか

これまでiPhoneは強すぎる端末だった。だが利用人口の多いアジア圏のニーズを拾い切れず、足踏みが続いている。クアルコムとの和解に追い込まれたのも、そうした苦境が影響しているといえる。

同じITの巨人であるIBMやマイクロソフトは、こうした危機を新たな自社の製品やサービスを送り出すことで乗り切った。アップルがそうした手を打つことはできるだろうか。

アップルは3月25日(米国時間)にスペシャルイベントを行った。そこでは、テレビ番組や映画などを配信する「Apple TV+」、ニュースや雑誌コンテンツの「Apple News+」、ゲームの「Apple Arcade」の3つサブスクリプション型サービスを発表した。しかし大きな反響はなかった。

かつてのアップルには新製品が出るたびに、ストアに並ぶという熱狂があった。発表されたサービスはそこそこ成功するのだろう。それは企業としては必要なことだ。だがアップルのファンが待ち続けているのは、もっと熱狂できるサプライズだろう。アップルが苦境から脱するためにも、そろそろサプライズが必要ではないだろうか。

占部 雅一(うらべ・まさかず)
メディアプランナー、デジタルハリウッド大学教授
出版社を経て、インターネットにおけるメディア展開、広告獲得の仕組みづくりに携わる。ヤフー、アイスタイルのタイアップ制作、プレミアムADネットワーク「glamメディアジャパン」のローンチ支援を経て、2012年よりモバイル最適化サービス「モビファイ」を提供。モバイルを中心に世界の最新ITトレンドを探索中。
(写真提供=MWC)
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