対日批判を強める世論に迎合し、点数を稼ぎたい

経済運営が行き詰まる中、文政権が重視した北朝鮮との融和政策も限界に直面した。北朝鮮は、中国やロシアとの関係回復を進めている。金委員長にとって、韓国との関係を強化する意義は大きく低下している。

文政権にとって、世論に迎合し、低迷する支持率をつなぎとめるために残された手段がわが国への強硬姿勢だ。京畿道議会で議員が一部の日本製学校備品に「日本の戦犯企業が生産した製品であること」を記すステッカー貼り付けを義務付ける条例案を提出した背景にも、対日批判を強める世論に迎合し、点数を稼ごうとする考えがある。

一方、韓国の経済界や知日派の外交関係者らは、対日強硬姿勢を強める政治と世論への危機感を持っている。その背景には、わが国は韓国経済の安定と成長のために欠かすことのできないパートナーの一人との認識があるからだ。

戦犯ステッカー条例案のマグニチュードは大きい

アジア通貨危機の際の日韓関係を確認すると、韓国経済界の危機感がよくわかる。

1997年、タイを震源地に「アジア通貨危機」が発生した。同年11月、通貨危機のあおりを受け、韓国政府はIMFに経済支援を要請した。これは、韓国が自力で経済を運営することができなくなったことに他ならない。

この時、韓国の大統領だった故・金泳三氏は、「日本をしつけ直す」というかなり強硬な対日姿勢をとっていた。それでも、わが国は経済運営が困難になった韓国を支援したのである。これは、韓国の経済界などに、日本は経済運営に欠かせないパートナーであるという確信を与えたはずだ。以後、韓国の企業経営者らは反日感情が高まる状況に懸念を示すことが増えてきた。

足元、わが国は、元徴用工への賠償命令が日本企業に実害を与えることを防ぐために、対抗措置を準備し始めた。国内でも、韓国の主張は容認できないとの意見が増えている。その上で戦犯ステッカー条例案が提案されたマグニチュードは大きい。