さらに2012年には、米国下院議会調査委員会が報告書を発表しました。そこではファーウェイとZTEという中国の通信機器大手企業について米国の安全保障への脅威であると主張されていました。そして2014年には、米国の政府機関などでファーウェイ製品の使用を禁止する措置がとられたのです。

2018年には、FBI、CIA、NSAなどの米秘密情報局幹部から、ファーウェイ製品やサービスの利用を控えるべきだといった発言があり、政府機関と政府職員がファーウェイとZTEの製品を使用することを禁じる国防権限法も成立しました。

こうした動きはアメリカで顕著ですが、ほかにカナダ、オーストラリア、ドイツ、英国などでも長らくファーウェイを警戒する動きがあったのです(山田敏弘「世界を読み解くニュース・サロン:ファーウェイのスマホは“危険”なのか『5G』到来で増す中国の脅威」ITmedia)。

2018年12月「ファーウェイ・ショック」の根底にあるもの

ファーウェイ、1月のCES2019で筆者撮影。「Seeing is believing. 」意味深なメッセージである(撮影=田中道昭)

このような背景のもと、2018年12月に起きたのが「ファーウェイ・ショック」でした。前述したように、孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が違法金融取引の疑いで、米国の要請に応じたカナダ当局によって逮捕されます。

孟副会長は、レン・ジンフェイの娘です。12月5日に逮捕が発覚すると、翌6日からの米国株式市場でダウ工業株30種平均は2営業日続落して、2万5000ドルを割り込む事態となりました。日経平均も一時600円を超す急落、中国株も下落と、「ファーウェイ・ショック」は世界同時株安をもたらしたのです。

本書執筆時点の2019年1月でも、「連邦検事がファーウェイを調査・起訴する可能性がある」と、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じるなど、まだ問題に決着はついていません。そして私はこの問題は長期化すると考えています。