これから「仕事」はどう変わるのか。事業家・思想家の山口揚平氏は「単なる“業界人”の価値は下がっていく。別の業界と縦や横のつながりを日頃から作らなければ、新しい発想を生み出せず、生き残ることはできない」と指摘する――。

※本稿は、山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「誰かと共にいること」自体が仕事になる

ソサエティ(社会)からコミュニティ(共同体)へシフトする中で、私たちの働き方や仕事はどのように変化するのだろうか。

仕事の変化を一言で言えば、それは労働から貢献へのシフトということになろう。それは何か時間を使って作業をすることではない。コミュニティに対して貢献することが仕事となる。

先にも述べたように、作業だけではなく、その人が「存在」していること自体が仕事となる場合もある。経済の中心はモノでもコトでもなく、ピア(誰かと一緒にいること)になる。そうすると、誰かと共にいること自体が仕事となるのだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/portishead1)

最近の卑近な例を挙げるのであれば、友活などもその部類に入る。何かを提供する作業を伴わず、一緒にいること自体が相手にとって価値となるからである。

したがってまずは、一緒にいて気持ちの良い人になる必要がある。会社組織に所属する場合でも、最も重視されるのは学歴やスキルではなく、「一緒に働きたいか?」という一点に集約される。

一緒にいて気持ちの良い人とは、一般的にはコミュニケーション能力の高さを意味するが、コミュニケーション力とは、言ってみれば「人との距離感のマネジメント」にほかならない。嫌いな上司、尊敬する先輩、未熟な後輩、友人、親戚、あらゆる人それぞれに応じた適切な距離を10段階くらいで設定でき、それぞれに応じた接し方、言葉の使い方、語彙を増やしていくことである。

相手を単にブロックするのか、仲良くなるのかといった白か黒かの選択ではない。相手との関係にグラデーション(濃淡)をつけることである。

誰もが「感情労働者」たるべきだ

次に、仕事の現場においては誰もが感情労働者(エモーショナルワーカー)たるべきだということだ。これは人の心の機微を敏感に知覚して、しかるべき対応をする意識を働かせるということである。

本書はあくまでも思考論(考えるための意識の使い方)を説いたものであるが、意識の使い方には後に述べるように、相手の気持ちに焦点を当てるといった国語のような方法もある。

くり返しになるが、巷で叫ばれるAI脅威論に対して、AIやロボットが仕事を奪うということについて気にする必要はない。AIは思考しない。ただ計算するだけである。計算はそれがどれほどの関数や変数を使おうと次元を超えることはできない。AIが目指すところはあくまで情報の最適化。「フレーム問題」に対処できておらず、上位次元から物事を捉え、有機的につなげることができない。それができるのが、人間の強みである。

人間は意識を使うことができる。意識は次元を超える。先ほどのエモーショナルワーカーのように、相手の胸元に意識の焦点を当て続ければ、おのずと相手の考えていること、望んでいるものがわかる。AIに勝つには計算力をつけるよりも、意識をコントロールする力を養うほうが大事だ。