髙光産業の妹尾社長は福岡の老舗運送会社の4代目です。大学卒業後、中小企業向け融資を担う政府系の金融機関、商工組合中央金庫(商工中金)に就職。その数年後に家業の髙光産業に入社した妹尾氏は、1980年代初頭、競合するメーカーの物流を同社が1つにまとめる「引取物流」のシステムをいち早く構築し、地域の物流の合理化を促進しました。

福岡市内の営業所(写真左)。同社のトラックの荷台には競合食品メーカーの製品が“呉越同舟”(同右)。「誰もやったことがないことを、やる。誰かがもうやったことを始めても意味がない」(妹尾氏)。

「卸屋さんには多くの食品メーカーさんから商品が運ばれてきますが、店前には毎日別個のメーカーの商品を積んだトラックが何十台も並ぶ。積載量が少なくても、前の車が荷下ろしを終えるまで待つしかなく、ものすごい無駄。そこで、うちが各メーカーから商品を引き取って、朝6時にまとめて納品するようにしました」(妹尾氏)

最初は各社に働き掛けても門前払いを食らったそうです。ところが、商工中金時代のお得意先である地元の有力企業が参加を決めると、1週間で100社以上が追随したといいます。

その後も倉庫を使わず即日配送する「スルー物流」の仕組みも他に先んじて構築するなど、勘所を押さえる目利きの鋭さと、周囲を巻き込む挑戦的な姿勢が妹尾氏を押し上げていきます。

2000年にスタートした「NCネットワーク」

妹尾氏は95年に社長に就任しますが、髙光産業が福岡で大きな存在感を示すようになったのは2000年にスタートした「NCネットワーク」というシステムを構築して以降です。

インターネットが世界を席巻していく大きなうねりの中で、IT化をなかなか進められない中小企業が各々の持つユーザー情報を一カ所で共有する、当時としては画期的なシステムを編み出しました。いわば“情報の協同組合”。ローコストですべての情報にアクセスする権利を会員企業が持ち、データをそれぞれの事業に活かし、時に協力し合う、というものです。