生い立ちからもうかがえるゴーン氏の強さ

来週にも行われるというゴーン氏の記者会見がとても楽しみだ。金融商品取引法違反と特別背任の容疑をめぐって東京地検特捜部と正面から対決する公判も非常に興味深い。1審で「無罪」を勝ち取るようなことがあるかもしれない。

ただし沙鴎一歩はどんな判決が出ようと、会社の資産をトップが私的に流用する行為は決して許されないと考えている。

過酷な逆境をバネにして社会的地位を獲得していく。その強さたるや、比類ないものだ。ゴーン氏の強さは、その生い立ちに由来するのだろう。

ブラジルで生まれ、幼少期はアマゾン川流域で貧困生活を余儀なくされた。その後父親の母国、レバノンのベイルートに移り住み、中等教育を受けた後にフランスの工学系国立大学に進学。世界的タイヤメーカーのミシュランに入社し、猛烈な働きぶりで頭角を現した。国籍はブラジル、レバノン、フランスの3カ国にある。未開のブラジルに比べれば、東京拘置所での生活などたいした苦労ではなかっただろう。

「富を偏らせる政治や経済の仕組み」を問う

今回の保釈のポイントは「変装」以外に2つある。10億円という巨額な「保釈金」と、国際社会から批判される「人質司法」の問題である。

保釈金は条件に違反しなければ没収されずに返されるが、10億円はあまりに巨額である。保釈金はその事件が社会に与える影響力や被告人の経済力に応じて算出され、通常は数百万円といったところだ。

ゴーン氏の事件の場合、本人の所得が巨額だったし、世界から注目される大きな事件だ。そう考えると、10億円は妥当なのかもしれない。

3月7日付の東京新聞の社説は、「巨額報酬を問いたい」との見出しを付け、「ゴーン被告については昨日、いわゆる人質司法の問題を指摘したが、一般的に巨額すぎるような報酬についても改めて考えてみたい。富を偏らせる政治や経済の仕組みに、ゆがみはないのかと」と書き出す。