言い訳を許さず、支店利益で全国1位

創業者でもある石橋信夫オーナーは「言い訳」が大嫌いで、私もその教えに従ってきました。しかし、人間はついつい言い訳をしてしまうもの。それは自分を正当化したいという本能の表れだと思います。部下が言い訳をするとき、私は最後までその言い分を聞きます。そして「それは言い訳やな」と確認すると、「そうです」と相手も認める。そこで「わかっとるんやったら、言い訳をする前に自己反省して改めていかなアカンわな」と諭すと、みな納得します。この納得感が大切なのです。

こういう対応ができるようになったのは、山口支店での経験が大きかった。36歳で同支店の支店長に抜擢され、私はやる気に満ちていました。率先垂範ですべての現場に出向き、クレームがあれば自ら駆けつけました。ところが、支店の社員約70人は誰もあとをついてこない。苛立った私は当初、部下を激しく叱責し、「鬼」と恐れられ、四面楚歌の状態でした。

赴任して半年後、石橋オーナーが視察に来ました。その夜、「支店長がこんなにも孤独なものとは思いませんでした」と愚痴をこぼしました。オーナーはひと言、「長たる者は、決断が一番大事やで」と答えるだけでした。具体的な話はなく、私は熟考し、「信念を持って進め」ということだと理解し、気持ちを入れ替えました。

それからは、社員一人ひとりとマンツーマンで徹底的に対話するようになりました。一方通行ではなく、自分の考えを伝え、相手にも率直な意見を言ってもらう。また、叱責したときには、その日か翌日に呼んで話をしました。なぜ私が怒ったのかをきちんと説明する。かみ砕いて話をすると理解してくれます。もちろん、率先垂範を実践していることが前提です。口だけの人間が信頼されることはありません。

こうして離れかけていた社員の気持ちが1つになった結果、2年目には1人当たりの売り上げと利益が全国でトップになりました。支店評価ではABCを超えて「S」評価を獲得しました。山本五十六の有名な言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」のとおりで、それ以来、私は社員との徹底対話を大切にするようになったのです。