月収に対して、どれぐらいの家賃が適正なのか。よく「家賃は月収の3分の1」と言われてきたが、それは払い過ぎかもしれない。長年、賃貸トラブル解決に携わってきた司法書士の太田垣章子氏は「スマホ代などかつてより出費が増えており、『月収の3分の1』では生活が行き詰まるリスクが高い」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、太田垣章子『家賃滞納という貧困』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

私たちの生活は「お金がかかるスタイル」になっている

家賃は月収の3分の1が相応と言われていたのは、もう過去の話です。今の世の中、理想は4分の1以下にまで抑えなければ、大きなリスクを背負いかねません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/OcusFocus)

外出先で喉が乾けば、コンビ二や自販機で飲み物を買えばいい。忙しくて夕飯が作れない時は冷凍食品や惣菜を買えばいい。そんな便利さに私たちはすっかり慣れてしまいましたが、水筒を持って出かけたり、自炊をするより、明らかに費用はかさみます。また、スマホや携帯代金の支払いなど、かつてはなかった必要経費も生まれました。

近年の夏の酷暑にはエアコンをつけなければ、とてもじゃないけど太刀打ちできません。だから、当然電気代も上がります。挙げだしたらキリがありませんが、私たちの生活は以前より、確実にお金がかかるスタイルに変化しているのです。

その状態で月収の3分の1に上る家賃を支払うとなれば、側から見れば豊かに見えても、生活はカツカツになって当然です。貯金をする余裕など残されていません。蓄えがなければ、何かの拍子に家賃が払えない月が出てきても何ら不思議ではありません。そういう人たちにとって家賃滞納とは、毎月直面するリアルなリスクなのです。

お金をコントロールする意識がない

日本では、小さな頃からの「お金」に対する教育がなされていません。「お金のことをむやみに口にするのははしたない」というイメージが根強く、お金に関する知識を得る機会に恵まれません。

家賃を滞納する人たちを見ていて感じるのは、そもそもお金をコントロールするという意識がもてない人が圧倒的に多いと感じます。

今の生活を続けていれば家賃が払えなくなりそうな状況に陥っていても、じゃあ、生活レベルを落とそう、あるいはもっと安い部屋に移ろうといった逆算の発想がもてないのです。