「ゼロワンではなく、ベターな方法」としての認証保育所

――なぜ、認可ではなく、認証での取り組みなのでしょう?

「保護者が利用する際、直接契約であること、施設側が開所時間を自由に設定できることなどから、認証保育所のほうが夜間帯保育の実施にあたっては柔軟性が高いと考えています。それと、保育人材の確保の課題も大きい。夜の人材確保となるとさらにハードルが高いわけです。保育の質が担保されていないケースが多いベビーホテルよりは、認証保育所という形で東京都がサポートするのは現実的であり、保護者にとっても魅力的な話だと思います。ゼロワンではなく、ベターな方法を探っていくということ」

東京都内には認可夜間保育園が3園ある。そのうち深夜帯に保育をしているのは、24時間保育を行っている新宿区新大久保のABC保育園のみである。

認証保育所では、610カ所のうち24時間保育を行っているのは八王子市の1カ所だ。

では、ベビーホテルはどうか。東京都福祉保健局によると、2017(平成29)年に届け出のあったベビーホテル536カ所のうち、24時間保育を行っている施設は52カ所だという。東京都の認可外保育施設指導監督基準では、職員の3分の1以上を保育士の資格者にするよう求めているが、基準が守られない場合、まずは行政指導、その後も改善されない場合は、改善勧告、施設閉鎖命令等と、処分までに時間がかかる。東京で深夜預けられている子どもたちのほとんどが、こうした環境で夜を過ごしていることになる。

認可外保育施設で事故が起こりがちだという目の前の問題を解決するには、まず認証保育所に深夜保育への取り組みを促すという方針は、現実に即している。

子供の数117人は「報告のあった人数」にすぎない

具体的には、4月以降、東京都の担当部局から保育園の実施主体である区市町村の保育課に説明し、保育課が各認証保育所に働きかけていくことになる。

取材に同席した福祉保健局の担当者は「実際にどうなるかは現段階では分からないが、積極的に区市町村や事業者へ夜間帯保育の重要性を説明し、実施に向けて働きかけていきたい」と話した。

だが、仮に手を挙げる事業所がなければ、計画に示されているような7園での深夜保育が実現しない恐れもある。

東京都によると、平成28年10月1日時点でベビーホテルに深夜の時間帯に預けられている子どもの数は117人。だが、117人は、届け出のあったベビーホテルから報告のあった人数にすぎない。深夜預けられている子どもたちが、より安全な保育環境に移っていけるのか。まずは117人に対して効果的な運営が始まることに期待しながら注目したい。

三宅 玲子(みやけ・れいこ)
ノンフィクションライター
1967年熊本県生まれ。「人物と世の中」をテーマに取材。2009~2014年北京在住。ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト「BilionBeats」運営。
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