開発主体決定の先願主義を是正せよ

もう一つの問題は、わが国では、資源開発主体の決定に関し先願主義を採用しているため、技術的能力ないしは財務的基盤が不十分な者が鉱業権を取得してしまうことが多く、結果として開発が進まないケースが頻発していることである。

10年3月末現在、日本には8179件の鉱業権が存在するが、稼行しているのは1558件にすぎず、5562件が未着業、1059件が休業のままである。

表2 資源開発主体の決定方法の各国比較
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表2 資源開発主体の決定方法の各国比較

表2は、資源開発主体の決定方法について、各国の比較を行ったものである。

この表からわかるように、わが国では、技術的能力ないしは財務的基盤をチェックすることなく、先願主義によって開発主体を決めている。決定にあたって、事業計画を審査したり、入札を行ったりすることもない。

これらの問題を解決するため、1950年(昭和25年)に制定された鉱業法が、今国会で、制定後初めて本格的に改正されようとしている。

改正のポイントは、

(1)鉱業権の設定に関する許可基準の追加:許可基準に、技術的能力および財務的基盤を有する者、公共の利益の増進に支障をきたさない者、などの条項を付け加える

(2)鉱業権の設定に関する特定区域制度の導入:国民経済上とくに重要であり、安定供給が強く求められる特定鉱物(石油・天然ガス等)について、現行の先願主義を見直し、国が指定した特定区域においては、国が開発事業者の募集、選定を行うようにする

(3)鉱物の探査に関する許可制度の導入:鉱物探査を行う者に対して、事前許可を求める。また、国が必要と判断した場合には、探査の結果の報告を求めることができるなどの点にある。

鉱業法が61年ぶりに本格改正されれば、先に指摘したわが国の資源開発をめぐる2つの問題点は、解決に向かうことになる。

政局の混乱のため、今国会での鉱業法改正は6月26日時点で実現していないが、法改正の成立が1日も早く望まれる。

冒頭で述べたように、わが国は、世界有数の海洋資源保有国となる可能性をもっている。

その一例が、メタンハイドレートである。

メタンハイドレートは、低温・高圧の条件下でメタンガスと水が結晶化した氷状の物質であり、それを産出、利用することができれば、日本のエネルギー事情は大きく好転する。