「アゴ」の20度アップで「自信のある人」に

人と会うときに初対面の印象が重要であることは「初頭効果」でお話をしました。良い印象とは「元気」「自信」「親しみやすさ」「優しさ」「頼りになりそう」などのプラスのイメージのことです。

イメージはちょっとした表情や姿勢で大きく変わります。ここで紹介するのは、「アゴ」を使って第一印象をアップさせるテクニックです。

カナダのモントリオールにあるマギル大学で、心理学者のA・マイノルトがこんな実験をしました。

1.アゴの角度をマイナス30度(うつむき加減)からプラス30度(上向き加減)まで10度刻みで変化させたCGを作る
2.それを64人の被験者に見せる
3.感想を聞く

その結果、驚くべきことがわかりました。96.9%(62人)もの人が、アゴをプラス20度の位置に設定した画像に「自信にあふれた快活な人」という好印象を抱いたのです。

英語のネイティブスピーカーが使うフレーズに「Keep your chin up」という表現があります。直訳すると「アゴを上げて」という意味ですが、実際には困っている人や落ち込んでいる人を励ましたいときに「あまりに気にするなよ」とか「前に進もう、がっかりするな」という意味合いで使われます。

まさに「アゴを上げた状態」が、前に進む明るいエネルギーを与えることを表したフレーズだと言えます。

プラス20度というのは、正面を向いた状態から気持ち上を向いた程度。あなたが、人に好印象を与えたいなら「アゴを気持ち上に向けておく」ことを意識してみましょう。

「30度」上げると尊大な印象になる

ただし、注意してください。マイノルトが行った同じ実験では「アゴを上げる角度が30度になると尊大に見える」という結果も出ています。アゴを上げ過ぎると、目の前の相手を見下すような視線になってしまうからです。

岸 正龍『相手に響く伝え方 人生を変える心理スキル99』(きこ書房)

アゴの上げ過ぎに注意するには練習しかありません。自分なりに20度や30度を意識した姿を写真や動画で撮りましょう。それを自分で見て、好印象を抱く角度かどうかチェックしてください。可能であれば、誰か信頼のおける方にチェックしてもらえると安心です。

私は若いころ、劇団に所属して演劇をしていました。そこでは、自分のアゴの角度を含む表情や立ち姿が観客にどのような印象を与えるか、厳しく指導され、毎日毎日練習をしました。

心理テクニックは読んですぐにできるものではありません。運動と同じく日々の地道な練習が必要なもの。しかしいったん身につけてしまえば、一生あなたを助けてくれるでしょう。頑張って練習してくださいね。