ほとんどの人の肌感覚は「景気はよくない」

また、高額品の売上は減少傾向ですが、ドラッグや化粧品は、リピートの訪日客が増えたことなどもあり、堅調に推移しました。こうしてインバウンド消費が小売業売上額を後押ししたのです。

しかし、米中貿易摩擦などにより、中国景気のさらなる減速傾向は鮮明で、訪日客の伸びや消費に急ブレーキがかかる懸念もあります。また、活況を呈しているように見えるインバウンド消費ですが、その恩恵を受けているのはごく一部だからでしょうか、内閣府が毎月発表している「景気ウォッチャー調査(街角景気)」を見ると、実際に現場で働いている人たちの景況感はそれほど良くはありません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/UygarGeographic)

この調査は、タクシーの運転者さんやホテルのフロントマン、小売店の店頭にいる人など、景気の状況を敏感に感じる人への調査で、「50」が良いか悪いかの分かれ目なのですが、直近も含めて、ここ数年間は「50」を切る月が多かったのです。とくに2016年は「40」程度まで落ちたことがあり、2017年は年末にかけて少し持ち直しましたが、2018年の1年間でも、「50」を超えている月は11月だけしかありません。12月も「48」という状況です。結局のところ、ほとんどの人の肌感覚での景気はそれほど良くないということなのでしょう。

消費税増税は景気にどのような影響を与えるか

今年10月に消費税率が2%上がります。2014年4月の増税時には、個人消費が先ほども述べたように、大きく落ち込み、その後もマイナスが続きました。今回はその轍を踏まないように、ポイント還元などで景気刺激策を行う予定ですが、全体の景気が危うい中で、果たして増税を行うべきでしょうか。

消費税増税には、当然、政治的な思惑も絡みます。安倍晋三首相が政治家として、また総理大臣在任時に最も行いたいことは消費税増税ではなく、憲法改正です。今の通常国会での憲法改正議論は先送りしましたが、4月の統一地方選挙、7月の参議院選挙を乗り越えれば、首相は一気に憲法改正に動くでしょう。野党が弱体化しているので、場合によっては衆議院との同時選挙の可能性もありますが、いずれにしても選挙を乗り越えれば、一気に憲法改正へと向かうと考えられます。

そうした中での10月の消費税増税。景気が悪化する中、消費税の増税を行うことは、国民の反発も強いでしょうし、憲法改正にも影響が出ます。私は消費増税のさらなる延期もあってしかるべきなのではないかと思っています。いずれにしても、今年の景気は予断を許しません。これまで比較的景気が良かった業種でも、相当の注意が必要でしょう。

(写真=iStock.com)
【関連記事】
"世界の下請け"に変わった日本企業の末路
日本の生産性が米国より3割低い根本原因
大流行"ミニ財布"で貯金が1割増えるワケ
コンビニで1万円のケーキが完売する理由
“結婚したら専業主婦”は下流への入り口