もし上手にウソをつくなら、前者のレーダー装置を引き合いにして「システムが誤って海自機を自動で捕捉してしまったようだ。こちらの責任ではないが、再発防止に努める」とでも釈明すれば事態は収まっただろう。防衛省としては、双方のレーダーの周波数がまったく違っても、はたまた前者のレーダーでは上空70度の高さまでしかスキャンできなかろうと、取りあえず韓国軍側が「すまぬ」といえば、後は外交案件として手を離すことも可能だった。

韓国側は、防衛省への反論のなかで「レーダー波のデータを見せろ」と主張しているが、これには国際的な問題が生じる可能性があり、簡単に応じることはできない。クァンゲト・デワンが搭載する火器管制レーダーは、ギリシャ海軍やインドネシア海軍など複数の国の艦艇で採用されており、データの公開は他国の安全保障リスクへと発展しかねない。防衛省は、レーダー周波数だけでなくレーダー波の成分、つまりそこに隠れている火器管制用の暗号コードまで含めて情報を握っている可能性が高いのだ。

ちなみに、今回の件で防衛省は、重要な情報をすべて米軍と共有しており、同時に事態の発生から時を置かずして、米軍に対して日韓の緊張を解くべく仲介の依頼を行っているはずだ。大きな目で見れば東アジアの安全保障にとって、日米韓の準軍事同盟的な枠組みは非常に重要であるし、アメリカも日韓のきしみを歓迎できる立場にはない。しかし韓国側が、日本による情報公開が困難であることを盾にレーダー情報の公開を執拗に迫るようだと、問題は深刻化し、やがて日韓のみならず米韓同盟にもヒビを入れかねない。

北朝鮮の違法行為をアシストしていた?

今回のレーダー照射案件を別の視点から眺めてみると、興味深い疑問点がいくつか浮かんでくる。まず、発端となった北朝鮮漁船の「救助」に、なぜ韓国の海軍の駆逐艦と海洋警察の大型艦が合わせて駆けつけたのか。

クァンゲト・デワンが国籍を示す旗を艦首にも艦尾にも、そしてマストにも掲揚せず、自分たちが何者であるのかの主張をしていなかったのはなぜか。公海上とは言え、わが国の排他的経済水域(EEZ)内、しかも日本の領海の近傍で活動するならば、国籍や船籍を示すのがマナーというものだろう。これで海自機の問いかけに応答もしないのでは、ただの謎の国籍不明艦である。さらに謎なのは、救助されたはずの北朝鮮漁船に関わる情報がまったく出てこないことだ。

筆者は、これをひもとく鍵を北朝鮮に求める。2017年11月29日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル発射に対して採択された国連決議2397号の制裁措置によって、現在、北朝鮮の経済状態はかなり悪化しているとされる。その結果、多数の北朝鮮漁船が日本海へと乗り出し、日本のEEZ内でも不法操業を行っている。さらに瀬取りによる制裁決議違反も繰り返されており、各国が監視体制を強めているという状態だ。