ストレスによって悪化しやすい心臓の病には、「心筋症」も挙げられる。心臓が全身に血液を送る際に使う筋肉である「心筋」がうまく収縮や拡張ができなくなる疾患のことを指す。頻度が高いのは「肥大型心筋症」と「拡張型心筋症」だが、中年の男性の症例が多いのは拡張型心筋症だ。

拡張型心筋症は、心臓の筋肉の収縮する能力が低下し、次第に心臓が拡張する難病の1つである。症例の約7割は男性で、基本的には先天的に発症の要因を持っており、それに加えて高血圧や糖尿病などの生活習慣病が関わって症状が出るケースが多い。

「発症は40代や50代。しかし、心機能の低下自体は20代から始まっています。心機能が低下し始めた段階から内服治療を行うのが望ましく、心室細動などによって突然死のリスクが高い場合や心機能の低下が進んだ場合には、植え込み型除細動器や心臓再同期療法など医療機器による治療を行います。最も病状が重い場合には、心臓移植が必要になります」

一般的な健康診断では確認できないため、発見の難易度は高い。調べるには、血液中に含まれるBNP値(※)あるいはNT-pro BNP値を測り、心臓の健康度合いを見る方法がある。

これらの疾患を含め、心臓に関する病を発症した後は、内服による薬物療法や生活管理が必要になる。週3回30分以上の運動をし、塩分摂取量は1日6グラム未満に抑えること。また、動物性脂肪なども摂りすぎないようにしたい。

※心臓の状態を示す値

▼CHECK POINT
【初期の症状、予兆は?】
運動をした後に、動悸や呼吸困難が起こったら要注意。
【典型的な症状は?】
進行すると、就寝中に目を覚ますほどの息苦しさを覚え、手足の冷えが出る。
【最悪どうなってしまう?】
重症化すると食欲低下や不整脈が起こり、最悪の場合には急死。
安斉俊久
国立循環器病研究センター病院心臓血管内科部門部長
慶應義塾大学卒業後、慶應義塾大学病院、カリフォルニア大学サンディエゴ校などで臨床と研究に従事。2011年より現職。
 
(撮影=松林真幸 写真=iStock.com)
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