夫や妻が、夜中に歯ぎしりをしている場合は、「起こして止める必要はないだろう」と木野氏は言う。前日のストレスを開放しているだけかもしれないので、歯ぎしりを止めると、ストレスが開放されず、体のほかの部分に障害が起きてしまう可能性もあるからだ。「毎日続くなら、TCHの可能性が高いので、まずはTCHかどうかの確認をして、TCHをなくすトレーニングをするよう勧めたほうがいい」と言う。

木野氏は、「貼り紙法はこれまでの治療法に比べると、薬も手術も伴わない特異なものだが、非常に治癒率が高い。さらに、お金をかけずに始められ、体に害がないことがいいところ。歯ぎしりや噛みしめに気づいたら、放置せずに試してみてほしい」と話す。

▼TCH改善に効果抜群 貼り紙法
(1)気づきを促す貼り紙を用意する
「歯を離す」などという文字やイラストを描いたメモ、シールを10枚以上用意する。文字や色・形は統一し、まったく同じものとなるようにする。
(2)生活空間に貼る
家の中や職場で必ず目に入りそうなところや、よく使うものに貼る。
(3)貼り紙に気づいたら、そのたびに脱力する
両肩を耳につけるつもりでギューッと引き上げる(歯と歯が接触した状態でよい)。「あっ」と小さな声を出し、一気に力を抜く。職場など声を出すのが難しい場合は、息を短く一気に吐き出せばOK。
「貼り紙を目にする→脱力する」という行動を繰り返していると、これまで自覚できなかったTCHに違和感を覚えるようになる。最終的に「歯が接触していた」と意識する前に、歯が離れるようになる。睡眠中の歯ぎしりに改善が見られる人も多い。
※木野氏への取材をもとに編集部作成。
宮崎泰成
医師
東京医科歯科大学医学部附属病院呼吸器内科・快眠センター長、教授。1990年、同大学同学部を卒業。現在、快眠センターにおいて、歯科・耳鼻科・精神科の医師と睡眠時無呼吸症の治療を行う。
 

大場俊彦
医師
慶友銀座クリニック院長。1998年、慶應義塾大学大学院博士課程外科系修了。耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医。慶應義塾大学関連病院などに勤務後、開業。著書に『いびき女子、卒業!』。
 

木野孔司
歯科医師
木野顎関節研究所所長。鶴見大学歯学部臨床教授。東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部非常勤講師。東京医科歯科大学歯学部卒業。著書に『自分で治せる! 顎関節症』(監修)など。
 
(撮影=岡村隆広、向井 渉 写真=PIXTA、Getty Images 図版作成=大橋昭一)
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