価格戦略はビジネス戦略

価格戦略は、ビジネス戦略そのものだ。企業の儲けである利益は、販売量・価格・コストの3つで決まる。式にするとこうなる。

利益=(販売量 × 価格)- コスト

このうち多くの企業では、販売量を増やしたり、コストを下げたりすることに多大な努力をしているが、価格についてちゃんと考えている人は驚くほど少ない。しかし実際には、ビジネスで儲かるかどうかは、価格戦略次第なのである。

日本の多くのビジネスパーソンは、「よいものを、安く売ろう」と考えてきた。だから「安売り発想」から抜け出せていない。ライバルとの販売合戦になると、「少しでもライバルより値引きして勝とう」と考える。これが大間違いなのだ。

価格戦略を間違えると努力も実らない

価格戦略の大切さを理解する必要がある。安く売るためには十分に考え抜いた戦略が求められるし、高い価値がある商品は価値に見合った価格で売ることが求められる。そして価格戦略を考えるには、お客さんの心の中にまで入って理解することが必要になる。

そこで私たちに用意された強力な武器が、行動経済学だ。「行動経済学」というと、何やらとても難しそうに思える。しかし行動経済学は「アンカリング効果」や「プロスペクト理論」のように私たちの日々の行動をわかりやすく読み解いた考え方だ。実はとても身近でわかりやすいものなのである。

『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)では、マーケティング理論に加え最新の行動経済学も紹介しながら、価格戦略の方法を紹介している。

どんなに苦労して一生懸命に働いていても、価格戦略を間違えると、その努力も実らない。価格戦略がわかれば、楽しみながら収益もあがるようになる。価格戦略を学び、価格にお客さんがどのように反応するのかをぜひ考えて欲しい。

永井孝尚(ながい・たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント
1984年慶應義塾大学工学部(現・理工学部)卒業、日本IBM入社。マーケティング戦略のプロとして事業戦略策定と実施を担当。さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当。2013年に日本IBMを退社。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、講演や研修を通じてマーケティング戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)などがある。永井孝尚オフィシャルサイトhttps://takahisanagai.com
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