石破派が「干される」のは、むしろ好都合

総裁選後の動きで石破氏にとって好都合なことがもう1つある。10月早々に行われる閣僚・党役員人事で、安倍首相が石破派を冷遇する方針を固めている点だ。「干される」のが、なぜ好都合かなのか。

総裁選で敗れた者にとって一番つらいのは、陣営を切り崩されることだ。安倍氏が石破氏の了解なしに石破派議員を閣僚に起用するようなことになると、石破氏はつらい。自分のグループが分断されるからだ。

安倍氏は当初、3選後の人事では、石破派から「1本釣り」することも念頭に置いていた。最有力だったのが斎藤健農水相を留任させる案だった。元経産官僚で政策通の斎藤氏の力量については、安倍氏も高く評価している。

だが、斎藤氏は総裁選期間中、「石破氏を応援するなら(大臣の)辞表を書いてからにしろ」と安倍陣営から恫喝まがいの圧力を受けたことを暴露した。この「告発」の結果、安倍陣営の強引な手法に世論の批判が高まったが、当然ながら安倍氏はじめ安倍陣営は、斎藤氏に対し怒り心頭だ。斎藤氏が留任する可能性は限りなくゼロになった。選挙期間中の経緯を考えれば留任を打診されても断るだろう。

おかげで石破氏は、自分の派閥を切り崩される心配がなくなった。安心して党内野党、反主流派のリーダーの役割を演じ続けることができる。

党内からは「次は3年後ではない」の声

次の総裁選に向けて動き出すとしても、3年は長い。気の遠くなるような話だ。しかし、自民党内では「『次』は3年後でない可能性は十分ある」との声が、かなりある。

安倍氏は残る3年の任期で憲法改正や日朝・日ロ外交などに力を注ぐつもりだが、政権浮揚できる材料はあまり残っていない。制度上、4選はできないことから、次第にレイムダック(死に体)化していく懸念もある。

そんな情勢で来年夏に参院選を迎える。そこで敗北するようなことになれば、安倍降ろしの風が一気に吹く。