「退去期限は9月末」京大の寮生が“恫喝”されている

17年12月、何の前触れもなく大学側は耐震性を理由に退去を通告した。老朽化問題解決のために積み重ねてきた歴史がまるでなかったかのように反故にされた。対策をめぐっては歴代の学生担当理事と補修実現の協議を続けることが確約され、寮生側が提示した補修案の同意もされており、補修の本格始動直前だったのだ。しかし、15年の3月から大学側は団体交渉の場を拒否し、寮生側が補修案の見解を尋ねても「検討中」とし、先延ばしにしてきた。

さらに、18年7月の交渉では寮生へのハラスメントがあった。大学側が、建設的な話し合いを実現するためとして、かつての団体交渉ではなく少人数交渉での実施を譲らず、それを寮生側が受け入れたうえでの開催だった。

吉田寮の交渉報告によると、川添信介理事は「僕たちは君たちにけんかを売られている」「自己認識が足りない」「けしからんことをやり続けている」などと、怒声を交えて寮生側に辛らつな言葉を浴びせた。寮生側が「恫喝されても困る」と伝えると、「恫喝ととっていい」と川添理事は認めたという。

これについて大学側からの謝罪を求めたが応じることはなかった。また大学側は、話し合いの合意内容や検討事項を文書にまとめることを拒否し、8月の話し合いでも合意形成に応じることなく、理事長は「意見は聞いた」とだけ言い残して会場から退出した。これのどこが建設的なのだろう。

そのほか、大学側が退去理由に「居住者が把握できないこと」を挙げたため、寮生側は寮生名簿を提出したが、受け取りを拒否するなど、どうあがいてもムダだと言わんばかりの態度だ。完全退去の18年9月末までもう1カ月を切っている。まるで寮生側が諦めるのを待っているかのようである。

山極総長は04年の他メディアのインタビューで、ゴリラの魅力について「お互いの顔を見つめて、コミュニケーションを図るところ」と話していた。また「(ゴリラに『出て行け』とドラミングされても)そこで、逃げないことが大切」と指摘。「何度も突進してきますがひるまずにじっと立っていると、そのうちあきらめて何もしなくなります」とも語っている。恫喝までされ完全退寮を迫られている吉田寮生はこれをどう捉えればいいのか。

(写真=時事通信フォト)
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