その理由の1つは、おサイフケータイがわが国独自のNFC規格に基づいていたことだ。端的に言えば、ガラパゴス化だ。わが国企業が独自の規格を重視した結果、他国で多く使われている規格との互換性の確保や環境変化への対応が難しくなったのだ。

NFCの規格には、ソニーの開発したFeliCa(NFC-F)のほか、蘭NXPセミコンダクターズの開発したNFC-A、米モトローラの開発したNFC-Bがある。おサイフケータイはFeliCaを用いてきた。一方、国際的にはNFC-AとBの規格がメインとなっており、FeliCaは日本国内での使用が主とみられる。

国内メーカーはスマホに対応できなかった

大きかったのは、国内電機メーカーがスマートフォンの登場に対応できなかったことだ。世界のスマートフォン市場では、米アップルや韓国、中国企業がシェアを競っている。一方で国内企業は携帯電話事業からの撤退が増えている。それに伴い、国内規格に準拠した“おサイフケータイ”の存在感が低下したのは、ある意味当然だ。

また、わが国の現金志向の強さも軽視できない。家計消費に占めるキャッシュレス決済の割合を見ると、米国では46%、中国では60%に達する。一方、わが国の割合は20%程度だ。その理由は、現金の使用に抵抗感がないからだろう。

わが国の紙幣印刷技術は高く、偽札の存在が社会問題化することは少ない。対照的に、米国で高額紙幣を使おうとした際、店員などにいぶかしい顔をされた経験のある方は少なくないだろう。現金に対する信頼感は、キャッシュレス決済の普及に影響を与える無視できない要因の1つだ。

“モバイル決済途上国”を狙うIT企業のうまみ

昨年6月に日本銀行が発表したレポート『モバイル決済の現状と課題』によると、中国都市部では消費者の98.3%がモバイル決済を利用している。一方、わが国での利用割合は6%程度と報告されている。このデータを額面通りに受け止めると、わが国はキャッシュレス決済の途上国と位置付けられよう。

昨年6月に日本銀行が発表したレポート『モバイル決済の現状と課題』より。店頭でモバイル決済を利用するという回答は6.0%にとどまった