しかしながら、これらは国際協力で経験を積みたいと願う人材が多数応募する人気ポストである。とくに外務省の予算により国連機関などに原則2年間派遣されるJPOについては、日本の大手企業を退職して挑む若手人材も少なくなく、2016年度の合格倍率は13.7倍だった。

任期付きポストが多い背景としては、主な国際機関の活動は加盟国の拠出金によって賄われており、その額は毎年増減するため職員数もそれによって左右され、長期的な終身雇用を行うことが財政的に困難であることが考えられる。また、プロジェクトごとに必要な人材を空席公募するため、プロジェクト期間に限定した有期雇用が多くなりやすい。加えて外務省のJPOは国連機関で活躍する人材育成制度という側面があり、長期雇用を念頭においていない。その他のポストについても固有の事情がある。

任期付きポストに対する業界の見方

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(編集)『世界で活躍する仕事100:10代からの国際協力キャリアナビ』(東洋経済新報社)

日本では正社員、契約社員、派遣社員などの雇用形態のうち、「正社員以外は負け組」といった社会的風潮が根強くあると感じる。契約社員・派遣社員は正社員のサポート・臨時的要員として扱われ、契約条件・待遇において不利であることも多い。任期付きポストでは福利厚生の面でも不利ではないか、と懸念されるかもしれない。

しかし国際協力の業界における任期付きポストは日本社会の契約社員とは事情が全く異なっている。国連機関を例にとると、任期付きポストで専門職員(Pスタッフ)のエントリーレベル(P2)であっても、修士号以上の学歴、関連分野での職務経験、英語またはフランス語で仕事ができることが通常最低限の応募要件として求められ、世界中から高学歴、ハイキャリアの人材が殺到する。

給与面や福利厚生も充実

給与面についても基本給に加えて地域調整給(ポストアジャストメント)など手厚く、高給である。福利厚生は扶養手当や教育補助手当、健康保険、年金など制度が充実しており、出産・育児休暇は当然の権利として取得する人が多く、日本よりもむしろ取得しやすい。