少ない固定費でも稼げる体質へ変化

「まず着目すべき問題は固定費で、付加価値を上げるために会社が用意した費用。同社のように直営の不採算店が多いのは、用意した費用が十分な付加価値を生んでいない状態。であれば不採算店を閉めて、新しいメニュー開発などに振り向けたほうがいい」と林さんはいう。

その結果が図3のグラフ。直営の店舗数は07年12月期から17年12月期にかけて1748店も減少。直営店のコストはフルに本体にかかり、そのコストが浮けばプラスの効果は大きい。前出の山田さんは「フランチャイズ(FC)店と違い、本社の判断で閉められる。以前の“直営店主体”という災いを転じて福となした」と評価する。

当然そこで働く従業員の数も減り、労務費という固定費も軽減される。直近の17年12月期の労務費は、12年12月期と比べて22.5%もダウン(図4参照)。結果、図1にはないが12年12月期と比べて17年12月期の固定費は260億円も低い水準になり、少ない固定費でも稼げる体質へ変化しているのだ。

顧客満足度指数もV字回復

楽天証券経済研究所のシニアマーケットアナリストの土信田雅之さんは、「注文と受け取り口を別々にする『デュアルポイントサービス』を進め、少ない人数で効率的な運営を進めている点も大きい」と評価する。

一方、「グランド ビッグマック(520円)」をはじめ「100円マック」と一線を画した話題の高価格商品の投入で来店者数と客単価がアップし、16年12月期以降の売り上げ増に貢献している。

「『名前公募』『総選挙』などの話題をSNSで広げていく、元手の少ない販促戦略をとった点も注目に値する」と土信田さんは指摘。実際、変動費であるはずの広告宣伝・販促費は対売上高比率で低水準に抑えられ(図5参照)、限界利益のアップにつながっている。

JCSI(日本版顧客満足度指数)で同社を分析してきた法政大学経営大学院教授の小川孔輔さんは「カサノバ社長が打ち出した『ビジネスリカバリープラン』は基本に忠実な手法だった。その変化に顧客は敏感に反応し、顧客満足度指数も15年の56.2ポイントを底に17年は64.0ポイントへV字回復している」という。そうした努力の結晶が、図6の17年12月期の損益分岐点なのだ。自社の問題洗い出しや改善に損益分岐点を活用してみたらどうか。

山田真哉(やまだ・しんや)
公認会計士
中央青山監査法人などを経て、現在は芸能文化会計財団理事長を務める。『女子大生会計士の事件簿』など著書多数。
 

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士
外資系会計事務所、監査法人勤務を経て1987年独立。著書に『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』など。
 

土信田 雅之
楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト
 

小川孔輔
法政大学経営大学院教授
 
(撮影=石橋素幸 写真=時事通信フォト)
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