なぜ掃除する子は人に優しく頭がいいのか?

【2:思いやりの心を育てる場としての掃除】

掃除は、心の荒みを取り除いてくれます。

筆者がかつて担任してきた「荒れた」子供たちは、最初は総じて掃除が下手でした。しかし、役割を明確にして取り組ませると、大きく変わります。やり方は簡単で「教える、やらせて任せる、褒める、感謝する」。これを繰り返すだけです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/hanapon1002)

「これは力持ちの○○君に任せたよ」
「△△さんはトイレ掃除のプロだね」

などと、きちんと相手を認めた言葉で任せていきます。こうした言葉をかけていくと、いわゆる「問題行動」の目立っていた子ほど、掃除が上手くなります。

なぜでしょうか。それは、これまで認められる場面が極端に少なかったからです。中には「今まで(親にも教師にも)一度も褒められたことがない」という子供もいます。掃除は、学力の高低などにかかわらず、やった子供をフラットに評価できます。やったことが確実に認められる世界です。

学校だけではありません。業績の落ち込んでいる企業でも、掃除教育に取り組んだ結果、再生に成功したという例はたくさんあります。それは床の汚れを取り除いているようで、実は心の汚れを取り除いているからではないでしょうか。

掃除がうまくなってくると、汚れた場所を積極的に探すようになります。見落とされがちな場所を考えるようになります。床がきれいになると、壁の汚れが気になりはじめ、ひいては天井、そして空間全体をきれいにしたいと思うようになります。

ここには一種のゲーム感覚もあります。掃除を表す「clean」の語源が「clear」であるように、「明確に」「すっきり」とクリアしたことがわかるのです。

掃除を工夫し始めると、使う人のことを考えるようになります。

例えば、トイレを掃除するのにも「こうだったら気持ちいいだろうな」と考えるようになります。すると便座の裏をきれいにするだけでなく、周りにあるにおいの原因を取り除こうとしたり、「トイレをきれいに使うコツ」を図や言葉で掲示しはじめたりします。

思いやりの心を自然と育む場として、掃除は価値が高いのです。

【3:学力を高める場としての掃除】

掃除にしっかり取り組む子は、おおむね家庭教育も充実しています。何をするにも、子供自身にじっくり考えさせる、やらせてみるという方針の家庭の子は、掃除が上手いです。自分のことは自分でやるということがしつけられている子供も、掃除ができます。これらは、自分のしたことに後始末ができる、責任がとれるということです。

「自分で考える」「教えたらとりあえずやらせてみる」「自分で責任をもたせる」という家庭の子供は、掃除の力だけでなく学力も高くなります。それは、物事への取り組み方の「基本」が身についているからです。