7月半ばまで熱戦が繰り広げられるサッカーW杯。これとほぼ同じ時期に、夏の甲子園、インターハイなど「高校スポーツ」の地区予選が行われる。だが、「出場枠」は都道府県によって大きな格差がある。スポーツライターの酒井政人氏は「問題解消のため、日本の高校スポーツはサッカーW杯から学ぶべきだ」という。酒井氏が提案する「解決策」とは――。

サッカーW杯の裏で、高校スポーツの「不公平な競争」

サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会が始まった。決勝が行われる7月16日まで熱戦が繰り広げられるが、この時期、日本国内でも夏恒例のイベントがある。高校スポーツの地区予選だ。野球であれば「夏の甲子園」、陸上であれば全国高校総体(インターハイ)の地区予選が全国で行われている。

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大学受験を控える3年生にとっては、「敗退=引退」となるケースがほとんど。1日でも長く仲間たちと戦いたい。そんな感情を抱きながら、部活動に励んでいることだろう。しかし、こんな「現実」を突きつけられたら納得できるだろうか。

189分の1=甲子園出場=25分の1

これは昨夏の高校野球の地区予選における「神奈川県」と「鳥取県」の甲子園に行ける確率を示した“数式”だ。出場校の数は、片や189校、片や25校。その格差は実に7.56倍にもかかわらず、現実にはこれは「イコール関係」にある。

▼甲子園出場、神奈川は189分の1、鳥取は25分の1

高校野球を代表とする高校スポーツにおける代表校・選手選びの「地域格差」(倍率)は以前からしばしば指摘されている。昨夏の甲子園出場をかけた地区予選で、参加校の多い地区と少ない地区を確認してみよう。

【参加校の多い地区】
(1)神奈川 189校
(2)愛知 188校
(3)大阪 176校
(4)千葉 168校
(5)兵庫 162校

【参加校の少ない地区】
(1)鳥取 25校
(2)高知 28校
(3)福井 30校
(4)徳島 31校
(5)山梨 36校

いずれの地区も甲子園出場の地区代表になれるのは1校だけだ。2018年夏は第100回記念大会ということで、甲子園の出場枠が史上最多の「56校」になる。もともと2校が代表となる北海道(北・南)と東京(東・西)に加え、今回、参加数が多い埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7府県も、エリアを2つにわけてそれぞれの1位のチームが出場できる。

とはいえ、2校出場は、今回の記念大会の限定措置では抜本的な“格差”是正はされない。また、前出の神奈川の場合、決勝まで勝ち抜くには通常、初戦(シード校の場合は1回戦は免除)から7~8連勝しないといけないのに対して、鳥取は4連勝で甲子園の切符をつかむことができる。全国屈指の激戦区・神奈川は、鳥取の2倍の労力がかかることになる。甲子園に行きやすい地区と難しい地区があるのは誰が見ても明白だ。