「全員関西弁」の甲子園・熊本県代表校の意味

そこから生まれる“歪み”はさまざまなところに噴出している。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nikada)

例えば、「野球留学」だ。「甲子園に出場したい」という思いから、激戦区の優秀な選手たちが比較的出場しやすい地区の名門校へ“流出”している。

よく知られたところでは、現在、米大リーグのシカゴ・カブス投手、ダルビッシュ有は大阪出身で東北高校(宮城)へ進学した。また、ニューヨーク・ヤンキース投手の田中将大と東京読売ジャイアンツ選手の坂本勇人は同じ兵庫(ふたりは同じ少年野球チームに所属していた)の出身で、田中は駒澤大学附属苫小牧高校(北海道)へ、坂本は光星学院高校(青森)へ進学している。「関西弁」を話すこの3人は、いずれも甲子園出場を果たして、日本のプロ球団からドラフト1位で指名されている。「野球留学」の成功例だろう。

この野球留学、アスリートとして成長するために、より良い指導者・環境を求めての進学ならいい。だが、甲子園に出られる確率が高いという理由での越境入学になると多くの“犠牲”をはらむ可能性がある。

▼チームに地元生まれ・育ちの選手がいない「不思議」

まず、自宅通学ではないので、寮費など保護者の経済的負担が重くなる。学校側が負担する場合もあるが、その他もろもろの生活費はバカにならないだろう。また、期待され野球留学したものの、甲子園に行けなかった場合、実家から遠く離れた場所にいる選手はどんな気持ちになるか。周囲からどんな目で見られるのか。全員がダルビッシュや田中のように結果を出し、輝けるとは限らない。むしろ、成功できないケースのほうが多いのだから。

そして、仮に甲子園に出場できたとしても、代表校にその地区出身の選手がほとんどいないという問題もある。2016年の熊本大会を勝ち抜いて甲子園に出場した秀岳館高校は、ベンチ入り18名すべてが熊本県以外の中学出身(主に大阪)だった。こうなってくると、結果的に該当地区で生まれ育った選手たちの「甲子園出場」という夢を摘んでしまうことになる。

もし、甲子園予選の格差が是正されれば、こういう事態にはならないはずだ。