マンガ家は「飽きない」のが才能

【高橋】自分がクリエイターなのかプロデューサーなのか、ということで悩むことがあります。長期連載しているマンガ家さんは、ずっと同じ作品を描いていて飽きないんですか。

【佐渡島】高橋さんはうちの会社で「FFS診断」(※)を受けましたよね。

※FFS(Five Factors & Stress):職務適正を診断する理論。診断によって自分の強みがわかるといわれている。

【高橋】受けましたけど、結果を覚えてないです(笑)。

【佐渡島】じゃあ結果をスタッフに問い合わせましょう。

【高橋】あ、僕は保全性と拡散性が11と11で一緒ですね。

高橋晋平さん

プロデューサーは拡散型だからすぐ飽きる

【佐渡島】FFSは大きく5つのタイプに分かれますよね。凝縮性、受容性、弁別性、拡散性、保全性。クリエイターと呼ばれる人たちは概して保全型で、同じ世界観の中で何かをずっと積み上げていくのが好きなんです。コルクのクリエイターさんたちも、ほぼ保全型でした。いわゆる職人さんもそうですよね。同じことをずっと何十年もやっている。カンナの削りの精度を一生極め続けるとか。彼らは「飽きない」のが才能なんです。一方、プロデューサーは拡散型なんで、すぐ飽きるんですよ。だからルーティンワークが苦手。

【佐渡島】クリエイターみたいに繰り返しやって極めたい気持ちと、新しいことをやりたい気持ちが、ほぼ一緒ってことです。

【高橋】なるほど。だから僕、ボードゲームを作っているときは延々没頭しちゃうんだけど、あるときふと、「これ、ずっとやってていいのか?」って気持ちが働くことがあります。僕の弱点でもあるんですけど。

【佐渡島】高橋さんと一緒に働く人がプロデューサー的な人だと、高橋さんは保全の方に集中できるし、高橋さんがクリエイターを抱えると。高橋さんはプロデューサーとして生きるだろうと思います。

【高橋】ふたつの性質が共存しているんですね。佐渡島さんは完全に拡散型ですか。

【佐渡島】はい、僕はすぐ飽きます。でも不思議なんですけど、人間関係には飽きないんですよ。エージェント業としてコルクを起業したのも、同じ人と何十年も付き合いたいたから。その人の新しい側面を引き出したい、見つけたいっていう気持ちがすごく強いんです。

高橋晋平(たかはし・しんぺい)
クリエイター
1979年生まれ。2004年東北大学大学院情報科学研究科修了、バンダイに入社。「∞(むげん)プチプチ」など、バラエティ玩具の企画開発・マーケティングに約10年間携わる。2014年に退社し、株式会社ウサギ代表取締役に。近著に『一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)』(あさ出版)がある。
 

佐渡島庸平(さどしま・ようへい)
編集者
1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、などの編集を担当。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。近著に『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ』(幻冬舎)がある。
(構成=稲田豊史 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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