みなさんはディズニーランドのようなテーマパークを、どのように楽しんでいるだろうか。編集者として『宇宙兄弟』など数々のヒット作を担当した佐渡島庸平さんは「ディズニーランドは巧みに設計されていて、誰でも楽しめる。一方でクリエイティビティの高い人は感じることもあるはずだ」という。これに対しバンダイで「∞プチプチ」などのヒット商品をつくった高橋晋平さんは「おもちゃの作り方も同じ。適正な『余白の量』は時代によって変わる」という。企画の達人同士の対談をお届けしよう――。(第3回、全3回)
佐渡島庸平さん(左)と高橋晋平さん(右)

ニンテンドーラボの「余白」の残し方

【高橋】4月20日、「ニンテンドースイッチ」をバイクや釣りざお、ピアノなどに変身させる段ボール製のキット「ニンテンドーラボ」が発売されました。任天堂のアイデアの豊かさには本当に驚きました。加速度センサーなどが内蔵されたコントローラーを、段ボールのパーツと組み合わせるだけで、遊び方がぐんと広がる。そこで遊び方の「余白」を残す、というのがすごいな、と。

【佐渡島】「余白」ですか?

【高橋】用意されたパーツだけでも楽しめますが、仕組みは段ボールですから、いくらでも自作することができるんです。新しい遊び方をみつけて、SNSで発信する人がたくさん出てくるはずです。この「余白」の作り方がうまい。カードゲームで言えば、全部真っ白なカードを渡されて遊べ、と言われても誰も遊べませんから。

【佐渡島】インスタグラムもそうじゃないですか。インスタがはやった理由は、写真の「よしあし」に対する余白がすごく大きかったからですよ。キレイな写真を褒めるだけでなく、写り込んでしまったものを見つける楽しさもある。フェイスブックよりも、余白の設計に遊びがありますよね。

新しいじゃんけん「グーチョキパーダラピン」

【高橋】5月5日に「グーチョキパーダラピン」という新しいカードゲームを発売しました。5種類の手で戦う新しいジャンケンです。グーチョキパーの3種類に、グーチョキパー全部に勝つ「ピン」と、全部に負けるがピンには勝つ「ダラ」の2種類の手を増やしています。このときも遊び方の「余白」を残すことを心がけました。

ジャンケンに2種類の手を増やしただけなのですが、その結果、ほかにもいろいろなルールを増やすことができるんです。こう考えたのも、「ニンテンドーラボ」のように、最近のヒット商品はうまく余白を残していることが多いからです。

【佐渡島】僕は「余白の量を読む」のが、まさに「時代を読む」ということかなと思っています。テーマ自体が普遍的でも、「余白の量」は時代によって変わるんですよ。人々の文化度が上がると、その文化の中にいる人たち全体のクリエイティビティが上がるので。

【高橋】どういうことですか?