また、夫婦で施設に入居した場合、夫が生存中は年金で月額利用料が賄えても、妻が1人残されると、夫の遺族年金だけでは月額利用料が支払えなくなるケースも少なくありません。ですから施設を選ぶ際には、年金で月額利用料が生涯支払えるのかを確認することが重要です。

一方、特養は入居一時金が不要で、月額利用料は大部屋で月額10万円程度。収入が国民年金だけなら5万円程度に減額されます。これなら年金だけで賄うことができます。有料老人ホームは、前述のように高額な費用がかかりますから、不動産収入でもない限り、選択肢にするのは難しいと考えましょう。

自宅介護は、施設への通いや宿泊、自宅への訪問を組み合わせられる小規模多機能型居宅介護施設を利用するのもよいでしょう。利用料は住所地によって異なり、ある施設では要介護1の場合、基本利用料が月額約1万320円(1割負担)、宿泊費は1日3000円程度で、これに食事代が加わります。こうした情報は、住所地の地域包括支援センターで得られます。

小規模多機能型居宅介護施設は、施設への通所、宿泊、自宅への訪問を組み合わせられるため、「介護をしている子どもの不在時に、親を宿泊させる」など、状況に応じて利用できる。サービス費用の設定は、施設により各種加算されるケースもある。

▼「親の介護費用は親の資産で賄う」と割り切る

太田差惠子
介護・暮らしジャーナリスト
NPO法人パオッコ理事長、AFP。20年以上にわたる取材活動を基に、遠距離介護、仕事と介護の両立、介護とお金等の視点で情報を発信。著書に『親の介護で自滅しない選択』など多数。
(構成=向山 勇 撮影=澁谷高晴 写真=iStock.com)
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