うんことの“出会い”がきっかけで閃いた

【田原】2011年にフィリピンに行かれる。向こうでは何を?

トリプル・ダブリュー・ジャパン 代表取締役 中西敦士氏

【中西】赴任したのは、ルソン島の一番南の貧困地域です。現地の農家の人たちの収入を増やすというミッションでした。目をつけたのは特産品のマニラ麻です。マニラ麻はタバコの巻き紙やお札の材料に使われていますが、いかんせんニッチ。売り上げを増やすには新商品の開発が重要なので、マニラ麻を使ったジーパンづくりに挑戦しました。

【田原】ジーパンは成功しましたか。

【中西】はい。成功しました。国内だけですが、実際に販売されています。

【田原】青年海外協力隊には2年行かれた。その後は何を?

【中西】シリコンバレーの大学に行きました。青年海外協力隊を派遣しているJICA(国際協力機構)には以前、「思い出予算」といって、活動を終えて日本に帰るときに村人に何か贈り物ができる予算がありました。そこで村の若者たちに何か欲しいものはないかと尋ねて回ったら、みんな「iPhoneが欲しい」という。水道や電気が途切れ途切れの地域なのだから、もっとほかに必要なものがあるだろうとツッコミたくなりましたが、同時に現地の若者にそう言わせるiPhoneに驚きました。それで次はシリコンバレーだと。

【田原】中西さんの著書によると、そこで“うんこ”と運命的な出合いがあったそうですね。その話、くわしく聞かせてください。

【中西】留学先ではアパートに住んでいましたが、そこが取り壊されることになり、1学期が終わるタイミングで引っ越しを余儀なくされました。次に見つけたホームステイ先は、アパートから徒歩30分のところ。2回に分けて歩いて荷物を運んでいたら、大問題が起こりまして……。

【田原】大問題って?

【中西】2回目の途中で猛烈な便意に襲われたんです。引っ越し前夜、最後ということでアパートのみんなとキムチ鍋パーティーをやりました。その日は問題なかったのですが、翌朝、私は調子に乗って、残ったキムチと鷹の爪を辛ラーメンにぶち込んで食べてしまった。それが腸を刺激したようで、歩いて10分くらいのところで「あれ、ヤバイな」と。

【田原】それでどうなりました。

【中西】迷いましたが、荷物を早く運びたくてそのまま前進しました。でも、結局持たなかったですね。

【田原】つまり、出たわけ?

【中西】はい、出ました。道の真ん中で、相当に(笑)。

【田原】それはたしかに大問題だ。漏らした後は、どうしたんですか。

【中西】1回目に運んだ荷物に服がぜんぶ入っていましたが、ホームステイ初日にうんこまみれで行くのはためらわれました。そこで元のアパートに戻って、まだ残っている友人に「何も聞かずにズボンを貸してくれ」と。自分の部屋でうんこを洗い流して、友人のズボンで引っ越しを終わらせました。