開発にすでに7億~8億円もかけている

【田原】どんな仕組みで予測するの?

【中西】まず超音波の測定器を体の外に貼り付けて、測定データをクラウドに送って解析して、アプリで知らせるという流れです。

【田原】商品化までは順調でしたか?

【中西】プロトタイプができた翌月に、週刊アスキーのウェブサイトに取り上げられました。そうしたら世界中から問い合わせが来て。そこから急ピッチで開発を進めました。開発にはお金がかかるので、クラウドファンディングもして1200万円集まりました。

【田原】開発はやはりお金がかかる?

【中西】はい、人を雇って実験を続けていくと、どうしても。いま3年目ですが、もう7億~8億円使っています。資金はベンチャーキャピタルや日本政策金融公庫、あとはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からもいただいています。

【田原】NEDOですか。どうやって説明したのですか。

【中西】高齢化は日本だけではなく、先進国共通の課題だと説明しました。とくに問題なのは介護施設の人手不足です。私たちの製品ができれば、クリーンな施設になって、介護士さんの負担は軽減され、介護を受ける側も喜んでくれるとお話ししました。

【田原】実際に介護施設だとどんな大変さがあるのですか。

【中西】介護の負担が大きいのは食事、入浴、排泄の3つです。このうち食事と入浴は時間を決めてやれるのですが、排泄だけは時間通りにできません。たとえば2時間ごとに連れて行っても出ないこともあれば、さっき行ったばかりなのに漏れてしまうこともあります。きちんと統計を取ったわけではないですが、特別養護老人ホームだと、入所者はほぼ全員、排泄に困難を抱えている状況です。

【田原】いまDFreeは何施設に導入されているのですか。

【中西】量産を開始したのは17年4月で、すでに国内150施設に導入されています。海外でも、フランスの介護施設でパイロット版の導入が始まっています。

【田原】利用者の反応はどうですか。

【中西】高齢者にとっては転倒が大きなリスクですが、じつは転倒の約4割は、足が悪いのに自分で無理してトイレに行こうとして起きています。DFreeを導入した施設からは、入所者が尿意を感じて自分で動く前に察知しておむつ交換できるので、転倒を防げるようになったと聞きました。あと、頭がはっきりしている入所者は、漏らしたくないから十数分おきにナースコールすることが珍しくないそうです。しかし、DFreeをつけたらもっと我慢できることが本人にもわかる。それまでトイレへの誘導が1日に20回以上だった人が、4回に減った事例もあります。