38歳の長男はかつて2つの企業に正社員として勤めたが、長続きせず、ひきこもり生活は10年以上。年金生活者の両親には約2000万円の預貯金があるが、それも長男が68歳の頃に底をつく。親亡き後、長男が生活保護に頼らずに生きていく方法はあるのか。ファイナンシャルプランナーの村井英一氏は、「家計破綻を防ぐには、月3万円でもいいので仕事で稼ぐことが必要です」という――。

せっかく一流大学を卒業し上場企業に就職したものの……

「もう、あきらめるしかないのかな……」

私の事務所に相談に来た父親(68)はいきなり悲観的な言葉を発しました。一人息子(38)の長男が10年以上のひきこもり状態で、妻(65)を含む親子3人と親亡き後の長男の家計状況を分析してほしいということでした。

子どもがひきこもりで収入がまったくないという状況でも、必ずしも将来家計が行き詰まるとは限りません。親が自宅を保有し、ある程度の資産があれば、子どもが働かなくても生涯にわたって生活保護に頼ることなく、生活を送ることは可能です。できる限り早めに対策を立てることで、家計の破綻を回避できる可能性が高まります。

今回のケースでも両親が自宅を保有していますので、あきらめるのは早すぎます。資産状況や収入と支出を伺って、詳細な分析をしてみる必要があります。

▼親亡き後、38歳長男は生活保護に頼らずにすむか

話を聞くと、父親がこれまで葛藤を続けていた理由がよくわかりました。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/mizoula)

長男は、都内の一流大学を卒業するとある上場企業に就職。親にとっては自慢の息子でした。しかし、仕事が合わなかったのか、しばらくすると長男は会社を辞めてしまいました。

父親は入社以来ずっと同じ会社に勤め、骨をうずめた営業マン。数年も立たずに会社を辞めてしまった長男の行動が理解できなかったようです。

「次は、絶対に辞めるような仕事は選ぶな!」

退職直後にそう叱咤激励したのですが、ちょうどそのころは景気が悪く、次の仕事はなかなか見つかりませんでした。求人があっても、契約社員やアルバイトといった非正規社員のものばかりでした。

「私が正社員での採用にこだわるように言っていたものですから、息子もより好みをしてしまったようです」