「少しだけ」ならひきこもりの長男も働ける

もちろん、正社員として一定の収入を得て、勤務先の社会保険に加入できればそれに越したことはありません。しかし、それがダメだからと言って、すべてダメ、と決めつける必要はありません。子どもが働けずに30代、40代になったら、そういう生き方も考えたいものです。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

長い期間働いていなかった人にとっては、「少し働く」ことも、決して簡単なことではありません。「働く」ということ以前に、「他人と接する」ことから取り組んでいかなければならない人も少なくありません。

ひきこもりのグループワークに参加するなどして、まずは「他人と接する」ことに慣れたら、ボランティア活動で「働く」ことを体験し、その後に収入を得る「仕事」につなげていきます。少しずつ成功体験を積み重ねることで、ステップアップができるようになります。

「正社員として働く」を唯一の目標にしていると、はるか遠く感じられ、親も子もあきらめがちになりますが、「少し働く」が目標となれば、手が届きそうです。

▼「できる範囲で働く」という選択肢

もちろん、1日3時間だけ、あるいは週に3日だけ、というように少しだけ働くことができる仕事が常に用意されているわけではありません。

障害者に対しては国が、「就労移行支援事業」で就労のための訓練を行い、「就労継続支援事業」で中間的な就労の場を設けています。それに比べると、ひきこもりを対象とした就労支援はまだ十分ではありません。

しかし、来年度から39歳までの若者の就労支援をする「地域若者サポートステーション」で、特例的に44歳までを対象とするモデル地域を設けるなど、徐々に体制を整えています。NPO法人などによる就労支援の取り組みも都市部を中心に増えてきています。

父親は言います。

「以前は息子に正社員として働いてほしいとばかり考えており、ここ数年は働くことを完全にあきらめていました。でも、決して二者択一で決めつける必要はありませんね。できる範囲で働くという道があってもいいのかもしれません。本人がやれることから考えてみます」

ご本人と話し合って、就労支援、そして中間的な就労ができるところを探してみることになりました。実際に収入を得るのはまだ先のことになりますが、手が届きそうな目標ができて、親子ともども前向きな気持ちになってきたそうです。

(写真=iStock.com)
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