中小企業では「解雇」に関するトラブルが多い。原因は、多くの経営者が「1カ月分の賃金さえ支払えば解雇ができる」などという、解雇に関する誤った情報を信じていることにある。しかし、現在の日本では、解雇はほぼ認められていない。そのかわり、「退職勧奨」という形を取ることができる。

「クビにした社員」から届く内容証明

夜7時を過ぎて、社長から電話があると不安になる。

お互いが営業中の昼間でないことを考えると、急にトラブルに巻き込まれた可能性があるからだ。そして、こんな相談を持ちかけてくる。

「解雇した社員が弁護士をつけて内容証明を送付してきた。相手は弁護士なんだけど、どうしたらいい?」

弁護士からの書面は、内容証明郵便で送付されてくることが一般的だ。内容証明郵便は、記載内容を郵便局が証明してくれるので使い勝手がいい。特殊な書面なので、受け取った側にプレッシャーを与えることもできる。

弁護士といえども、事件が始まったばかりの段階では、相手の反応がまったくわからない。そこで、内容証明郵便を出して、相手の出方を見定め、具体的な手段を検討していくことになるのだ。これを「とりあえず揺さぶりをかける」と表現する人もいる。

届いた内容証明を読んで、経営者が一様に驚くのが「支払期限」の設定だ。残業代請求や損害賠償請求では、「記載された金額を1週間以内に指定口座に振り込め」などと書かれてある。受け取った経営者は焦って、「弁護士がそう言っているのだから、期日までに対応しないと大変なことになる」と早合点してしまう。

一方的な支払期限の指定は、あまり気にすることはない。支払わなかったからといって、相手もすぐに何かをできるわけではない。期限を設定しているのは、期限がないと人は動かないからだ。「いつでもいいので支払ってください」と「いつまでに支払ってください」では、重みは違ってくる。期限内に支払わなければ、訴訟などの方法を検討してくるだろう。

さて、内容証明には金額以外にどのようなことが書かれているのだろうか。