全国の店舗に出向き、社員一人ひとりとじっくり話す星崎社長(左)。(写真提供=メガネスーパー)
8年連続赤字、賞与8年間凍結という崖っぷちから黒字化したメガネスーパー。星崎尚彦社長は早くも「売り上げも、給料も、小売業界トップクラスに引き上げる」と社内で宣言。有価証券報告書によると、メガネスーパーの平均年収は350万円程度。小売業界では、大手百貨店やファーストリテイリングなどのトップクラスは800万円前後だから開きは大きい。しかし、社長は本気。現場の力、お客さまの心に響くサービスを武器に高みを目指す。前編・後編の2回にわけて、お届けする――。(後編)

有志社員90人が地方店舗に集まり、手助け

前編で述べたように、メガネスーパーの改革は、私が直接店舗運営に関わること、10時間ぶっ通しの全体会議を中心に進めてきた。私が直轄する店舗は「天領」(天領とは、江戸幕府の直轄の領地)と呼び、最初は6店舗を指定。その後、22店舗まで増やした。天領を起点に、当たり前のことを当たり前にできる現場をスタッフと一緒につくってきた。

メガネスーパーには、天領以外にも多くの店舗が存在する。天領ほど頻繁に訪れることはできないが、全国の店舗をサポートするような取り組みを進める必要があった。それが、私の苗字をもとに命名した「ホシキャラバン」だ。

ホシキャラバンに参加するのは、本社や各地の店舗で働いている有志の社員たちだ。初期は、私と数名の社員でキャラバンを組んでいたのだが、参加したいという社員が次第に増えてきた。50人規模で地方店舗に乗り込み、周辺エリアのスタッフも合流して、軍勢が膨れ上がり、総勢90人になったこともあった。

ホシキャラバンの部隊は、店舗のさまざまな問題や課題を一気に解決する。店舗の前にのぼりを立てる班、周辺でビラ配りをする班、店内の内装や設備などについて改善を手がける班、接客を手伝う班などに分かれて、全力で応援する。経営的な判断が求められる場面では、私が即断即決する。その場で処理できるメンバーがいなければ、電話会議で別の場所にいる社員とつなぎ、解決を図る。

毎週900人のスタッフと会って話す

私はビラ配りが得意だ。折りたたみの自転車を持ち込み、ビラをカゴいっぱいに携える。店舗周辺を巡り、現地の人々と話す。地域の特性や競合店の動向に気づかされることも少なくない。これまで相当な枚数のビラを配った。全スタッフ1600人中、トップ3に入る枚数だろう。

ホシキャラバンは全国の店舗スタッフと面談をする機会にもなっている。正社員だけでなく、契約社員やパートスタッフも含め、全員と膝を突き合わせる。どれだけ多忙でも、店舗スタッフとコミュニケーションを持つことだけは、怠ることなく続けている。私と話をすることで、スタッフたちの意気が揚がるなら、時間や労力は惜しくない。私は私で、スタッフと会話をするのが何より楽しいのだ。

数年前、まだスタッフが900人くらいだったころは、毎週700人くらいと直接会っていた。現在はスタッフが1600人ほどに増え、私の業務も増えたが、それでも毎週800~900人と会っている。