決着の場「労働審判」は、弁護士の腕の見せ所

社員が弁護士をつけて不当解雇を争うときには、「労働審判」という手続きを利用することが増えている。これは3回の期日内で解決を目指す制度だ。労働審判のなかでは、解雇を撤回したうえで退職扱いとして金銭的解決で終了させることが多い。

ここは経営者側代理人の腕の見せどころでもある。第1回の期日でいかに充実した主張ができるかで勝負が決まるところがある。限られた時間でいかにわかりやすく表現できるか。弁護士として、静かに血が騒ぐ。

当事者間で話し合いがつけば、調書が作成されることになる。調書のなかでは、金銭を受領したことを第三者に口外しないという条項を盛り込むこともある。金銭を支払ったことを他の社員に知られないようにするためだ。社長としても他の社員には知られたくないだろう。細かいようだが、社長の参謀を担うというのは、こういう社長の心を汲むことでもある。

去った社員のことを悪く言ってはならない

解雇のトラブルを解決すると、経営者からとても喜ばれる。そういうときには、去った人のことを絶対に悪く言わないように伝える。トラブルがあったとしても一度はともに自社の将来を描いた人だ。何があっても去るときには静かに見送るのが将の器だ。

老子の言葉に「戦勝以喪礼処之」(戦いに勝ちては喪礼を以って之に処る)というものがある。意味は、戦争に勝っても敗者に対して喪に服するように礼節をもって接するべきということだ。経営者は、胸に刻むべき一言であろう。