PHP研究所では「真修会」と呼ばれる30分ほどの集会を、月に1度開催している。真修会について、経営理念研究本部長の佐藤悌二郎取締役は次のように説明する。

松下幸之助のビデオ映像を見ると、講話録を読むのとは違う感銘を受ける。東京本部の真修会にて。
写真を拡大
松下幸之助のビデオ映像を見ると、講話録を読むのとは違う感銘を受ける。東京本部の真修会にて。

「当社は松下電器の創業者、松下幸之助が創設した社会活動のための機関です。出版だけでなく『世と人の繁栄、平和、幸福』を実現するための拠点なのです。真修会は当初、松下幸之助を囲む朝食会で、朝食の後、松下の講話を聞くのが通例になっていました。真修会と呼んで、現在のかたちで行うようになったのは1967年からです」

真修会の開始は8時30分。ホールに社員が集まり、通常の朝会のように社歌斉唱などをする。その後、役員・幹部の講話があったり、松下幸之助が講演をするビデオを視聴したりする。

私が見たのは当時88歳の松下幸之助がPHP(繁栄、平和、幸福)の理念を訴えるビデオ講話だった。老齢ながら松下幸之助は活力にあふれており、重厚で、ゆったりとよく響く声をしていた。

ビデオの中で、ひとりの外国人参加者が質問をする場面があった。

「ミスター松下、私はPHPの精神に感嘆しました。御社の社員はいつもそういう精神で仕事をしているのですか」

すると、松下幸之助はくっくっと笑いながら答えた。

「いやいや、これがまた難しい。灯台もと暗し、という言葉があります。うちの会社でもPHPの精神を実践していない社員はおります。何事も完全ということはありません」

佐藤取締役は「熱意と誠意の人でした」と振り返る。「公の心」があり、企業が社会に貢献する大切さを常に語っていたという。「チャーミングな人でした。こちらが緊張していると冗談を言って笑わせる。あんな人はもういません」。経営の神様は、謹厳実直の権化というより、滋味あふれる人柄の持ち主であったのである。