治療実績は病院の実力を知る一つの指標。納得の治療を受けるには、病院と「治療法」選びが重要。手術数から実力病院を検証する。

 

最も死亡者が多い難治性がん

最新がん統計で、もっとも死亡者数が多いのが肺がんである。さまざまな新薬が開発されてはいるものの、肺がんは診断技術や医学の進んだ現代でも、難治性のがんの一つだ。

その治療法は、がんの組織型(タイプ)によって異なる。特に、大きく分けられるのが、小細胞がんと非小細胞がん。肺がん全体の10~15%を占める小細胞肺がんは、放射線と化学療法が効きやすく、化学療法が治療の中心で、がんが胸部に限定している場合は放射線も併用する。

非小細胞肺がんは、さらに、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分けられる。転移がない場合には手術の適応になるが、早期にがんが見つかった人以外は、手術、化学療法、放射線治療といった複数の治療法を組み合わせた総力戦になる。

「肺がんが完治して社会で活躍されている方もたくさんいますが、手術が可能なのは肺がんの約3割。約7割の患者さんは化学療法と放射線療法を併用した治療か、化学療法で治療するこけた患者さんでも、早期の方以外は多くの場合、再発を防ぐために術後の化学療法をお勧めしています。適切な治療を選ぶためにも、放射線治療装置があって、呼吸器外科医、肺がんの化学療法専門の医師、放射線治療の専門医が揃っている病院で治療を受けたほうがいいでしょう」

肺がんの外科治療の専門家である癌研有明病院の中川健院長は、そう強調する。

3つの専門医のうち、特に不足しているのが、放射線治療の専門医である。放射線治療の専門医がいる病院かどうかは、日本放射線腫瘍学会のホームページで確認できる。

また、肺がんの化学療法専門の医師の役割も重要である。個人差もあるが、一般的に肺がんの化学放射線療法や化学療法は強い副作用を伴う。そうかといって、副作用を怖がって勝手に標準的な量より薬を減らしたら、効く薬も効かない。効果が最大限になるような量の薬を使いながら、副作用をうまくコントロールする。肺がんの薬物治療には、そんなテクニックと最新の知見に基づいた知識、経験が必要になる。

肺がんの薬物治療専門の医師がいるかどうかを見分けるのは難しいが、国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の久保田馨外来医長は次のように話す。

「肺がんの手術や化学療法の症例数の多い病院であれば、各専門家が揃っている可能性が高いはずです」

2009年のDPC参加病院・準備病院のうち、同年7月から12月の半年間の肺がん手術が多かった病院を症例数の多い順に51病院リストアップしたのが表のランキングである。肺がん手術に関しては、国内外で、症例数が多ければ治療成績もよいといった報告が複数出されている。しかし、手術の合併症で死亡するリスクもある難易度の高い手術でありながら、症例数が年間1桁の病院もあるのが実態だ。

「手術なし」の件数は、入院治療で化学療法や放射線治療、2つを併用する化学放射線療法を行った症例数の合計である。

 

緩和ケアは治療の早い段階から必要

一方、肺がんの場合、半分以上の人は、胸水がたまっていたり、ほかの臓器に転移のある状態でがんが見つかっている。そういったケースに対する化学療法は、組織型や特定の遺伝子変異があるかどうかによって、テーラーメードの治療が進む。

非小細胞肺がんの中でも、扁平上皮がんには、シスプラチンとゲムシタビンなどの併用療法が第一選択である。しかし、非扁平上皮がん(腺がん、大細胞がん)にはシスプラチン+ゲムシタビンに比べシスプラチン+ペメトレキセド(商品名・アリムタ)のほうが、効果が高いことがわかっている。また、腺がんで非喫煙者、女性に効果が高いとされるのが、分子標的薬のゲフィチニブ(商品名・イレッサ)である。

「ゲフィチニブは間質性肺炎などの副作用が出やすいので、慎重に使うべきですが、EGFR(上皮増殖因子受容体)遺伝子に変異があれば、治療の選択肢の一つになります」(久保田医長)

ところで、進行した肺がんに関して、2010年8月、世界で最も権威の高い医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に注目すべき研究結果が発表された。

進行した非小細胞肺がんの患者のうち、治療を開始する段階から、精神的・身体的苦痛を和らげる緩和ケアと標準治療を受けたグループのほうが、標準治療のみを受けたグループより生存期間が延びたというのだ。生活の質が向上しうつ症状も少なかったとの結果は予測がつくとしても、生存期間にまで影響するというのは驚きだ。この研究は米国マサチューセッツ総合病院で行われた研究で、緩和ケアは、専門医師とナースプラクティショナーによって、最低でも月1回提供された。ナースプラクティショナーは、診療看護師とも訳され、医師と看護師の中間の職種だ。

緩和ケアは、末期がんの人に対するケアと捉えられがちだが、WHOでも、治療の早い段階から標準治療と並行して必要としている。がん対策基本法でも、「国及び地方公共団体は、がん患者の状況に応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること」と定められているくらいだ。

「米国の研究の緩和ケアでは、病状の理解の促進や治療選択に関わる意思決定も含めた精神的なサポートが行われています。がんの種類や進行度にかかわらず、医療者のサポートを受けながら、納得して治療を選ぶことが、いい結果につながるのではないでしょうか。医師の説明が1回でわからなければ、改めて時間をつくってもらえないか頼んでみるなど、まずは、担当医の説明をじっくり聞き、必要に応じて、セカンドオピニオンも活用することが大切です」と久保田医長はアドバイスする。

治療に関わる悩み、経済的な不安は、病院のソーシャルワーカーや看護師、拠点病院の相談支援センターで相談してみてもよいだろう。

※すべて雑誌掲載当時
※ランキングは1607病院のDPCデータを使用。2009年7~12月の6カ月間の退院患者についての治療実績。