核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して国際社会からの圧力が高まっている。しかし北朝鮮は一方的な悪であり、国連安保理事会を中心とする国際社会は一方的な善といえるのか。問題解決のためにはまず、米英仏ロ中の核保有5大国だけが既得権を振りかざす国連の抜本改革が必要ではないかと橋下徹氏は指摘する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(12月19日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

「持った者勝ち」のNPT体制! なぜ北朝鮮だけ核保有が許されないのか

核・ミサイル開発を止めない北朝鮮に対して、国連安全保障理事会が制裁決議を採択するなど国際社会からの圧力が強まっているが、北朝鮮は核・ミサイル開発を諦める気配はない。12月16日に開かれた国連安保理の閣僚級会合でもアメリカと北朝鮮は非難の応酬を繰り広げた。北朝鮮は超大国・強国のアメリカに対して自衛の措置だとして一歩も引かない。

たしかに北朝鮮の核兵器保有(核保有)を容認することは日本にとってつらいことだ。中国、ロシアに加えてさらなる近隣国が核兵器を持つことの脅威だけではなく、アメリカ本土が狙われる状態になったときに、アメリカは自国の壊滅状態を覚悟してまで日本を守ってくれるのかという疑念が必然沸き起こり、日米同盟の根幹を揺るがす状況に陥る(デカップリング)。しかしこの問題の根源には、NPT(核不拡散条約)体制の欺瞞というものが存在することを頭に入れておかなければならない。

NPT体制は、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスにのみ核兵器の保有を認める。そこには合理的な理由は全くない。先に持った者勝ちで、これ以上核兵器保有国を認めるとリスクが大きくなるという理由だけで5カ国のみに核保有を認めたに過ぎない。

写真=iStock.com/3D_generator

さらにインド・パキスタンも事実上核保有を認められることになった。特にインドに対しては当初ルール違反として、国際社会は批判を浴びせたが、時が経ってインドは今や核保有国になってしまった。そしてインドに対抗せざるを得ない隣国パキスタンも事実上の核保有国になった。

このように結局NPT体制というのは、「持った者勝ち」という世界なんだよね。北朝鮮の核保有を否定するなら、インド・パキスタンの核保有はなぜ否定されないのか、なぜ北朝鮮同様の圧力・制裁が加えられないのか、もっと言えばなぜ5カ国だけに核保有の権利が与えられているのかを合理的に説明する必要がある。けれど、この点安全保障の専門家と称する者を含め誰も合理的には説明できないんだよね。だって合理的な理由なんて全くないんだから。

だからこそNPTは第6条で、核保有国は核軍縮に努めなければならないとしている。ところが核保有国は、その核保有という厳然たるパワーを手放すことは毛頭考えておらず、一向に核軍縮の話は進まない。核保有が完全に既得権化している。

(略)

核を放棄したウクライナはロシアにクリミア半島を奪われた!

1991年に旧ソ連が崩壊し、ソ連に属していた国が独立する流れになった。ウクライナもその一つ。ただしウクライナには旧ソ連の核兵器が存在した。そこでウクライナの独立にあたり、ウクライナの核廃棄が問題となったが、ウクライナは自国の安全のために核兵器をそのまま保有し続けたいと考えた。ゆえにウクライナの核廃棄を促すため、アメリカ、ロシア、イギリスがウクライナの領土の安全を保障するかわりに、ウクライナが核を廃棄するという国際的な約束が取り交わされた。これをブダペスト覚書という(1994年12月5日)。

ところが見てよ。2014年にウクライナで親ロ政権が倒れるや否や、ロシアの見事なハイブリッド戦争戦略によって、あれよあれよという間にウクライナのクリミア半島はロシアに併合されてしまった。クリミア半島はロシアにとっては自国の存亡にかかわる死活的な戦略地域。ロシアと地中海をつなぐ要衝地であって、ロシアの核配備した原子力潜水艦の基地(セバストポリ)がある。

プーチン・ロシア大統領としては、このクリミア半島が西側諸国の影響下に入ることは絶対に阻止しなければならなかった。ゆえにどんな手を使ってでもクリミア半島を奪取しなければならない覚悟だったのだろう。その後のプーチン氏の発言において、クリミア半島奪取において核をちらつかせる発言もあった。

で、ブダペスト覚書によってウクライナの領土保全を保障したアメリカとイギリスは何をやったか。なんとロシアに対する抗議と経済制裁だけ。結局ウクライナの領土保全を保障できなかったんだよね。もしウクライナがブダペスト覚書以前のように核兵器を保有していたら、プーチン氏=ロシアがクリミア半島を奪還する決意をする際に相当ハードルが上がったことは間違いないだろう。核兵器を保有するウクライナに対してそうは簡単に手出しはできないはずだからね。

このように国際社会の取り決めなんて実にいい加減なものだ。現実に実力行使をしてきた相手に対しては、相当な覚悟すなわち戦争を覚悟しなければ、さらなる実力行使で応じることは難しい。さらにロシアは核兵器を保有している。ゆえにウクライナを支援する西側諸国は核兵器をちらつかせるロシアに対して軍事力をもってクリミア半島を奪還することができない。せいぜい抗議と経済制裁止まり。

(略)

橋下徹公式メールマガジン 好評配信中!Vol.85は12月26日配信予定
政界に突然彗星のごとく現れた男は、大阪の何を変え、誰と戦い、何を勝ち得たのか。改革を進めるごとに増える論敵、足を引っ張り続ける野党との水面下での 暗闘をメルマガ読者だけに完全暴露。混迷が続く日本経済、政界の指針を明確に指し示します。元政治家、弁護士、そして7人の子どもを持つ親として、読者からの悩みごとにもズバリ答えます!

橋下徹と直接やりとりできる、唯一のコミュニケーションサロン、「橋下徹の激辛政治経済ゼミ」へのご入会はこちらから!→ http://ch.nicovideo.jp/toruhashimoto