守ってきた墓に入った上での期限付きサービスも登場

こうした社会の動きから、墓に入る本人の側からも「墓の行く末まで子孫に負担をかけるのは申し訳ない」「墓のことまで自分で道筋をたてておきたい」といった要望が出るようになってきた。子孫による管理に頼らないで済む永代供養墓(えいたいくようぼ)や樹木葬といった共同墓のほか、海洋散骨や手元供養などの選択肢も珍しいものではなくなってきている。

それでももちろん主流は従来型の平面墓地だ。ただ、平面墓地のなかにも「レンタル墓」といって、5年や10年などの期間を決めて契約するタイプが現れてきている。引き続き管理する人がいるなら契約は延長可能で、担い手がいなくなれば撤去されて遺灰は永代供養墓に合祀(ごうし)されるという仕組みだ。実は海外に目を向けると、フランスやシンガポール、香港など、こうした有限スタイルがスタンダードになっている国は少なくない。

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大橋石材店「お墓のみとり」ホームページ

最近ではさらに踏み込んで、契約者が亡くなった一定期間後に墓じまい(改葬)する死後事務委任契約サービスもある。横須賀市の大橋石材店が2017年6月にスタートした「お墓のみとり」は、契約者が亡くなるとあらかじめ取り交わした死後事務委任契約を執行し、管理期限中(13~73カ月)は墓守サービスを実施する。期限が来たら墓じまいし、本人の希望に従って、特定の永代供養墓に移したり海洋散骨したりする。

事業を計画した同社の大橋理宏社長は、石材店として遺族と向き合うなかでこのサービスの着想を得たという。「墓じまいを決めて遺骨を合祀する段で、お施主様から『思っていたのと違う!』『家族の遺骨と私の遺骨がそばに行けなくなってしまう!』と言われたことが始まりです。ご本人が亡くなった後に、先に眠るご先祖様と一緒に墓じまいする手だてはないものかと考えました」

スタートから1カ月の相談件数は3件ながら、35社の石材店が代理店として加盟するなど、業界側の体制づくりは順調だ。「墓じまいの後は故郷の永代供養墓で眠りたい」といった要望に応えられるよう、できるだけ今後も全国規模で加盟事業者を集めていくという。具体的には2018年末までに士業事務所や任意後見団体を含めて200社の加盟を目指す。

同時に、情報不足から来る、お墓に対するイメージのズレも是正していきたいと語る。「お墓を片付けなくちゃいけないもの、迷惑をかけるものといったように見ている方が多いのは肌で感じています。お墓はなにも悪者ではありませんから」(大橋社長)

墓じまい中のお墓(提供:大橋石材店)

お墓は故人や先祖を思い出す拠点という重要な役割を担っている。決して無碍(むげ)にはできないが、重荷として背負い、子孫が耐え忍ぶというのもまた違うだろう。

日本は年間死者数が右肩上がりを続ける「多死社会」にすでに突入している。そのなかで、個人個人がそれぞれの事情に合わせて付き合える墓が必要だ。学業や仕事の都合で都会に出た結果、生活拠点と墓の場所が遠く離れ、実家の墓の面倒を見たくても見られないというケースは多い。実家に帰って親と話したときなど、もしも先祖のお墓に対して負担に感じることがあれば、最新の選択肢を検討してみることで、少し心が軽くなるかもしれない。