ネットは私たちに「全世界とつながる自由」を与えた。しかし、それは「全世界から見られるリスク」でもある。SNSでの「悪気のない発言」で、気づかないうちに信用を失う人が後を絶たない。ネット時代において、私たちはどのように情報を扱うべきなのか。ある広報マンの失敗事例を紹介しよう。

「公」と「私」の境界なきインターネット世界

私は「広報」のプロフェッショナルです。広報とは、「広く報(しら)せる」の文字通り、「新製品が出ます」「新しい取り組みを始めました」「こんな事業を行っています」といった情報を社内外に広め、「選んでいただく」=「ブランドを高める」ための仕事です。

広めるべき情報を峻別し、「攻め」と「守り」のバランスをとりながら「真意を伝えるコミュニケーション」が求められる仕事です。私はこの仕事をとおして、「広めるべき情報」と「出さない情報」を区別する癖をつけてきました。

最近、ネットやSNSでの発言で失敗する人が増えています。たとえばこんな事例です。

・ノリで写真をSNS に投稿し、職を失った
・過去のつぶやきを理由に内定が取り消された
・ 一緒に写った人に無許可で写真を公開した後、疎遠になった

SNSは知人との連絡ツールだけでは終わるとは限りません。「公と私」の境なく、全世界に向けて「情報を発信する道具」という認識が希薄なために、若者だけでなく著名人ですら、しばしば炎上を起こしています。

採用や入学の「最終決定打」もSNSの情報に

今や、人の採用、ビジネスパートナーの見極めにも、事前にネットでの発言や活動歴を調べるのは当たり前のこととなりました。

ツイッターが日本に上陸してしばらく経ったころのことです。日本の大手企業や、名だたるグローバル企業で広報の要職を歴任した知人に、ある企業から「次の選考に通れば、役員のポジションにする」という話がありました。ところが、十中八九間違いないと思われていた内定が、突如見送られてしまいました。彼が少し前に投稿したSNSでの発言が原因だったことが、後日判明しました。

ツイッターでの「○○社の受付嬢はいつも美人だ」という書き込みが上層部の目に留まり、「情報発信のプロとしての意識が甘い」という理由で白紙になったと、人事担当者がこっそり教えてくれたというのです。