まず、都民ファーストの会の合計得票数は188万4,029.850票、得票率にして33.68%である。一方、大敗したとされる自民党はといえば、合計得票数126万101.444票、得票率は22.53%である。ちなみに、民主党から自民党へ政権交代した2012年の衆院選で大勝した時の自民党の得票率は小選挙区では43.01%だった。

「都ファ」の得票率はそれほど高くはない

国政選挙と地方選挙であり単純比較はできないが、今回の都議選での都民ファーストは大勝という割には、得票率はそれほど高くはないということが分かる。つまり、都民ファーストに対しては前評判ほどの期待も支持も集まらなかった。むしろ有権者をシラケさせ、「政治を諦め」させてしまったといえるのではないかということである。

このことは投票率にも表れている。今回の都議選の投票率は51.28%、前回は43.50%なので7ポイント近く上昇しているが、前々回、2009年の都議選は54.49%であり、今回よりも3ポイント以上高い。この時の選挙は衆院選の前哨戦と位置付けられ、自民党が大幅に議席を減らし、民主党が議会第1党となった選挙である。民主党への投票は半ば自民党への批判票でもあった。その前の05年の選挙が43.99%、その前の13年が50.08%、1997年に至っては40.80%であるから、09年の投票率がこの十数年では最も高い数値である。

今回の都議選の投票率は決して高いというわけではない。加えていえば、50%強でしかないのであるから、残りの50%近くは投票していないということである。そして、この投票していない人たちこそ、都政に関して「政治を諦めた」人たちであるといえよう。

「小池劇場」の国政進出はまだ先か

自民党もダメ、民進党にも期待できない。かといって都民ファーストに望みを託すかといえば、小池知事人気にあやかっただけの緑の集団、しかもついこの間まで自民党や民進党だったのに看板を架け替えだだけの人も多くいる、そんな地域政党に都政を任せることなんてできない。公明党も学会員ではないし、共産党もなんとなく。無所属は、海のものとも山のものとも……投票に行かなかった背景・理由は、おそらくそんなところだろう。

要するに都民ファーストはまだ第三極たりえていないし、反自民票を根こそぎ取っていったというわけではないということである。別の言い方をすれば、反自民の受け皿にすらなっていないということである。

では、都民ファーストが「国民ファースト」になったらどうだろうか?

結論からいえば、「国民ファースト」は国政進出への意思の表れではなく、盛り上がった支持を保たせるための、カタチを変えた小池劇場であるように思われてならない。小池知事も馬鹿でもなければ軽くもない。都民ファーストへの支持がうつろいやすものであることを重々承知していて、支持を確実なものとし、それをしっかり固めていくため、これからしばらくは新人都議の引き締めと東京大改革の着実な推進に専念していくはずだだろう。無党派層が増加の一途をたどっていることも踏まえれば、当然のことであろう。

小池知事は都知事選に始まる小池劇場を何度も繰り返しつつ支持を広めたのみならず、その基盤を着々と固めてきているように思う。「国民ファースト」はその延長線上にありうる選択肢ということではあっても、東京都にとっての一大行事である東京オリンピックを前に都政を放り出して国政へなどということはありえない。小池都知事は慎重である。これは永田町界隈で関係者から聞かれる話でもある。