私は当たり前だと思う。女子医大に限らず、首都圏の私大病院において、医療安全対策の最大の課題は「アルバイトの合間に診療する無責任体制」だからだ。ところが、これは女子医大の経営を考えれば、やむを得ない。医師の給与を下げるかわりに、アルバイトを許可しなければ、やっていけない。

東京の高度医療を担う私大病院の危機

女子医大は名門病院だ。普通に診療していれば、スタッフ医師が今回のような過量投与を見落とすはずがない。「患者の安全性よりアルバイト」という医師の都合が優先されたため、急変時の対応が後手に回ったのだろう。この問題は、組織論や職業倫理だけでは改善しない構造的な問題だ。解決するには医局員の立場にたった実効性のある対策が必要だ。

東京の医療の中核を担っているのは、私立の大学病院だ。東京都に本部を置く医学部は13あるが、このうち11は私立医大だ。

こんなに私大病院が多い地域は東京だけだ。東京の次に私大病院が多いのは神奈川県と大阪府だが、いずれも3つだ。東京の高度医療は、私大病院が担っていると言っても過言ではない。だが、私大病院は、経営が悪化すれば「倒産」するしかない。女子医大や日本医大は、その瀬戸際にある。

このまま無策を決め込めば、いくつかの東京の医大は必ず破綻に追い込まれる。経営者の責任追及だけでなく、患者保護の視点から建設的な議論が必要だ。

(写真=時事通信フォト)
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