痛みの場所が、日によって違う?
むかしむかし、医学がまだ発達していなかったころのお話。
「頭痛の原因は、なんだろう?」
「頭が痛い」のだから、きっと原因は「頭」にあるにちがいない──そう考えたある集落のお医者さんは、「頭が痛い人」の頭をていねいにしらべてみた。
すると! ──なんと「頭の痛い人」全員に「白髪」があることがわかった。
「原因がわかったぞ! 頭痛の原因は白髪だ!」
さて、この話を聞いてどう思っただろうか? 「まあ、昔だったらあり得るね」と鼻で笑ったそこのあなた、この先を読んでも本当に笑えるだろうか?
ある国の整形外科医が「腰痛の原因は、なんだろう?」と考えた。「腰が痛い」のだから、きっと原因は「腰」にあるに違いない。そこで、1980年台に普及したMRIという機器を使って、「腰が痛い人」の腰をていねいにしらべてみた。
すると! ──多くの人の腰の「椎間板」がすり減り、その一部分がうしろに飛びだしていた。そして大事な神経を圧迫しているように見えたのだ。
「見つけた! これが腰痛の原因だ!」
「椎間板ヘルニア」という名前を、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。椎間板とは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役目をしている軟骨のこと。この軟骨の一部が脊髄神経を圧迫して、首や腰が痛くなると言われている。
──神経を圧迫?
いかにも痛そうな話。だが、中には少数ながら疑問に思う医師もいた。なぜなら、「椎間板ヘルニア」患者さんの経過を観察すると、どうやら痛みの程度は、日によって、時間によって変化しているようだ。痛みを訴える場所も、一定ではない。ヘルニアは、右や左に動いたりはしない。もちろん、出たり、引っ込んだりもするはずがない。どう考えてもへんだ……。