厚生労働省の調査によると、腰痛に苦しむ日本人は、実に人口の4人に1人に当たる2800万人と推定され、年々増加傾向にある。一方、街を歩けば、整形外科や整体に鍼灸院、書店では『○○で腰痛が治る』のような健康書が山ほど目につく。それでも腰痛患者が減らないのはなぜなのか? 腰痛改善のための世界初の小説を著した著者が、その謎と大いなる誤解を解く。短期連載、最終回となる第3回は「ギックリ腰」のお話です――。

イチかバチか、腰を後ろに反らしてみる

「すっごい痛いし、すっごい勇気いるけど──」

ある日テレビをつけると、明石家さんまさんがご自身のギックリ腰を、一瞬で治したというお話をされていた。

「ギックリ腰、治してん。なった瞬間、治してん!」

本を入れた重い段ボールを持ち上げようとしたとき、「ギクッ!」と腰にきてしまったというさんまさん。次の瞬間、イチかバチか、「わああああー」叫びながら腰を後ろに反らしたらしい。

「ほんだら、あれ……?」

なんと痛みは消えてしまったという。「すごい! さんまさん天才!」。私はテレビの前で思わず叫んだ。だって、それは最新の腰痛研究からすると「正解!」といってもいい方法だから。おそらくそんなことはご存知のないさんまさんが、直観で判断し、行動に移し、自分で解決したところがすごいではないか。

安静にすれば再発する可能性が高くなる

ギックリ腰になったことのある人ならわかると思う。アレが、どれほど痛くて、どれほど動けないか。腰を後ろに反らすなんて、とんでもない。そんなことができるギックリ腰など、もともとたいしたことがなかったのではないか? そう思った人がいたとしても無理はない。

この25年、世界では腰痛に関する研究が飛躍的に進んでいる。長い間、腰痛といえば、骨や関節、椎間板や靭帯、筋肉など、腰の部分的な「損傷」だと思われてきた。ところがさまざまな研究により、「慢性の腰痛」は、「腰の問題」というよりは、「脳」そして、その「脳」と「心理社会的要因」との関連が強いということがわかりはじめている。

「急性腰痛」、つまりギックリ腰に関しては、「安静にすれば痛みが長引き、再発する可能性が高くなる」ことがわかっている。