森友、加計、ハゲーッ!を連呼する議員の不祥事もあって

選挙において政策論争が重要なことは百も承知だが、何よりも有権者に関心を持ってもらってはじめて政策論争が成立する。物事には順番がある。誰も注目していない選挙において、自称インテリだけが眉間に皺を寄せて小難しく政策論争をやっても意味がない。まずは有権者に関心を持ってもらうこと。その上での政策論争。

「選挙に関心を持ってもらう」って、口で言うのは簡単だけど、それをやろうとしたらほんと大変なんだよ。メディアや自称インテリが、選挙のたびに「有権者はしっかり考えましょう」と言ったところで投票率はなかなか上がらない。役所が投票率を上げるために組んでいる予算だって、大都市になれば数億円規模にも上る。それでも、そのことだけで投票率が上がることはない。

自分の一票で自分の命や財産が守られるという状況でない限り、一般の有権者は選挙に関心を持たない。誰が政治をやっても同じという諦め。でもそれって、そこまで有権者が政治権力に追い込まれてないという平和な証拠でもある。

だから、いくら「選挙はショーじゃない」と言ったところで、面白くなければ関心を持たないのが人間のサガ。関心を持ってもらおうと思えばショー的な要素も必要になる。それをポピュリズムだと批判したところで、じゃあ有権者が関心を持たない選挙をやり続けることがいいのかと言えばそんなことはない。

もちろん程度問題はあるけど、有権者が関心を持つためのショー的な要素は選挙に必要だ。ショー的な要素として最も効果が高いのが対決の構図。そりゃ選挙というのは、もともとが命の奪い合いだった政治決戦を投票に替えたものなんだから、対決の構図というものが選挙には一番しっくりとくる。ただそれをきちんと意図的にプロデュースするとなると至難の業だけどね。

今回の都議会議員選挙は、都民ファーストの会が自民党に挑む、対決するという点で十分面白さがある。それに加え、国政においてもバタバタと一騒動、二騒動起きた。森友学園問題に始まり、加計学園問題、テロ等準備罪の採決、ハゲーッ! を連呼する議員の強烈な面白不祥事。自民党対都民ファーストの会の対決の構図に加えて安倍政権への審判の意味も加わった。

こういう状況での都議会議員選挙は民主主義にとって本当にイイことだ。ただしさっきも述べたけど、今回の選挙では各政党に大きな政策の違いはない。都民ファーストの会の政策は、これまでの都政の流れを前提とした主張だし、都民ファーストの会以外の政党もほぼ同じことを言っている。多少のニュアンスの違いはあるけど、それは誤差の範囲内。

結局のところ、選挙なんて正確な緻密な政策選択というよりも、現状の政治をそのまま続けるのか、変えるのかの選択にしかならない。またそれで選挙の意味としては十分だ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.60(6月27日配信)からの引用です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!! 今号は《【どうなる都議選?】「現状への不満」をすくい上げたほうが勝つ!》特集です。

(撮影=市来朋久)
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