のんびりすぎるぞ、新太郎!

 

わ、スミヤン!

 

老後のリスクに備えなければ、
お前らの世代は破産する危険もあるぞ!


そんなお前に……

 

医学が進歩すると、長生きするようになる。
長生きはうれしいことだが、老後の資金はドンドン減ってしまう。
だから、長生きはカネのことを考えると、リスクなんじゃ。

 

長生きがリスク!?
じゃあ、お金がなくなるまえに死ねっていうの?

 

そうは言っておらん。
元気なら年寄りも働けばいい。
定年してから死ぬまでの期間が短ければ問題ない。

 

え~。
老後はゲーム三昧で暮らそうと思っていたのに。

 

あほ、ゲームなんかしてる場合か! 働け!
それに、長生きのリスクはまだある。
それは「インフレ」じゃ。

 

インフレって、デフレの反対だから、物価が上がるってことか。

 

そうじゃ。
労働力不足で人件費が上がると、それはインフレの予兆だ。
その上、大地震でも起きたら、物不足になって、大インフレになるかもしれん。
長生きをしている間に大インフレになったら、老後の蓄えが吹き飛ぶ危険がある。

 

大インフレ、怖い!!
オレの大好物の牛丼も将来、値上がっちゃったらどうしよ~。

 

日本人が将来のインフレリスクに備えるには
銀行預金をたくさん持っていても安心できんのじゃ。
それに備えるには、2つの手段がある。

 

え?
なになに!?
聞かせて!

 

……牛丼おごってくれる?

 

なんだよ、こすいな……

 

大盛り卵付きだよ……

 

わかったよ!
大盛り卵付き!

 

よっしゃ。じゃあ、教えてやろう。
そのひとーつ!

「年金は70歳まで待て!」

 

え!? それだけ!?
そもそも、オレたちの世代って、年金あんまりもらえないんでしょ?

 

今の年金制度は、貯金するカタチではなく、
現役世代が年金世代を養うカタチになっている。
だから、現役世代の人口が少なくなると、
年金額も少なくせざるをえない反面、
大インフレ時代になったら年金額も大インフレになるのじゃ。

 

へぇ。年金って、自分で自分のために貯金しているのかと思ってた。

 

そして、年金は受け取り開始時期を選べる。
普通は65歳から受け取るが、70歳から受け取ると、
毎回の受取額が、65歳で受け取る場合よりも42%増える。
つまり、受け取りを遅くすればするほど、もらえる額はでかい。
長生きとインフレに備える強力な味方なのじゃ。

 

42%も!!
じゃあ絶対、70歳からにする!
だけど、待てよ。
早死にしたら損なんじゃない?

 

たしかに、総受取額の計算でいうなら、
82歳よりも長生きしなければ、70歳の受取開始は得にはならん。

 

82歳!?
オレ、そこまで生きてる自信ないな。
やっぱ、65歳からもらおっかな。

 

あほ! 単純に損得だけで考えるな。
70歳まで受給開始を待つことは、保険に加入するようなものだ。
65歳から70歳までに受け取れるはずの年金を保険料として国に納め、
長生きしてインフレが来たときに、国から割増年金を受け取れると考えればいい。

 

そっか。一番怖いのは、すごーく長生きしたときにインフレが来て
資産が足らなくなることだもんね。
たとえ、インフレにならずに早死にしても、それはそれで幸せかも。

 

そして、ふたーつ!

「老後資金は、銀行貯金だけで持つな!」

 

なんでだよ!
老後のために貯金して何が悪いのさ。

 

インフレになれば、日本円の現金の価値が目減りする。
だから、金融資産の一部は、インフレに強い資産で持っておけ。
たとえば、ドルや株は、円がインフレになると値上がりすると言われている。
インフレで生活費が上がったら、ドルや株を売ればいいのじゃ。

 

ドルや株は怖いイメージがあるけど、
インフレで現金も銀行預金も目減りしてしまうなら、
結局は同じくらいのリスクだってことか。
それなら、いろんなモノを少しずつ持つことで、
ヒドイ目に遭うリスクを避ける方が賢いね。

 
監修 塚崎公義
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。
(監修=塚崎公義(久留米大学教授) 作画=室木おすし)
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