Q. 日々の仕事の判断力、決断力を磨くためには?

「決断を下す」と言うと、清水の舞台から飛び降りるような覚悟が必要だと思う向きもあるだろうが、通常のビジネスシーンでは、小さな決断を次々と下す必要に迫られるほうが多い。同期トップで東レの取締役に就任、東レ経営研究所社長などを歴任した佐々木常夫氏は、「決断することに過度なプレッシャーを感じる人もいるかもしれないが、役員といえどもトライ&エラーの連続だ。繰り返すうちに嫌でも慣れてくる」と構えすぎない姿勢を勧める。

決断を迫られる場面になってから、「さて、どうするか」と考えているようでは遅い。出世できる人間は例外なく即断即決。トライ&エラーだから間違ったなら修正すればいい。

スピード感を持って意思決定するにはどうすればいいか。リクルートを経て起業し、現在は組織人事コンサルタントとして活躍中の小倉広氏は「場数がモノをいう。たくさんの経験を積むこと」と答える。決断力がある人は、エイヤッと腹をくくって即実行に移す。「リクルートには『気に入らなければ自ら変えよ。さもなくば従え』という有名な格言がある。判断力や決断力を磨きたいなら、不満を言う暇があれば変えるか従うかしてみることだ。いずれも経験になる」。

場数を踏めば当然失敗も多くなるだろう。だがそれでいい。発明王として名を馳せたトーマス・エジソンは、電球を発明するまでに1万回もの失敗を重ねたといわれる。しかもそれを「失敗」とは言わずに「うまくいかない方法を1万通り見つけただけ」と言ってのけた。フォード・モーター社を創設し、自動車王といわれたヘンリー・フォードも同様。爆発的に普及した「T型フォード」を完成させるまで、幾度も挫折を経験しているが、「失敗は再挑戦するためのよい機会」として意に介さなかった。偉人たちの業績は、場数がモノをいった好例だろう。

解答:何事も即断即決、間違ったら修正すればいい
佐々木常夫
佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表
1969年、東大経済学部卒業、同年東レ入社。自閉症の長男と肝臓病とうつ病を患う妻の看病をしながら仕事に全力で取り組む。2001年取締役。03年東レ経営研究所社長。10年より現職。
 
小倉 広
小倉広事務所代表取締役
組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。大学卒業後、リクルート入社。ソースネクスト常務などを経て現職。一般社団法人「人間塾」主宰。「人生学」の探求、普及活動を行う。
 
(大沢尚芳=撮影)
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