駅や病院、工場内などでの衝突防止・安全確認、書店やコンビニでの万引き防止などさまざまな所で使われている特殊ミラー(気くばりミラー)を製造販売するコミーは、従業員34人ながらボーイング社やエアバス社など航空機メーカーやエアラインに手荷物入れの忘れ物確認ミラーを納入し、販売数は累計40万枚を突破した。独特の経営哲学で同社を育てた小宮山栄社長に聞いた。

世界100社以上のエアラインに納入

「鏡には3種類あるんですよ。まず、自分の顔を見る鏡。これが大半。次に万華鏡など遊びの鏡。そして、他人を見る鏡。コミーが作っている鏡は他人を見る鏡で、『気くばりミラー』と呼んでいます」と、コミー創業者であり、社長の小宮山(こみやま)栄(77歳)は言う。

小宮山栄・コミー社長

小宮山は会社としての失敗や成功体験、出来事などを「物語」として活字に残したり、伝えたいことを「唄」にすることが好きだ。最近も「鏡の唄」を作った。そこにコミーが作るミラーの特徴が出ている。

「フラットなのに 広い視野♪死角が見えて 安心だ♪」

同社の主力商品であり、売り上げの約65%を占める「FF(ファンタスティック・フラット)ミラー」は、表面がフラットなのに凸面鏡と同じ様な広い視野を持つ世界初の製品だ。特殊プラスチック製で軽くて割れにくいので、どこにでも貼ることができる。

一般的なのは、通路の曲がり角の衝突防止、駐車場の出入り口の安全確認、ATMや券売機で後ろから暗証番号などをのぞき見されることを防止するミラーもある。地下鉄など駅構内の円柱に貼るタイプもある。中でも、世界中で活用されているのが、航空機の手荷物入れの中に貼り、忘れ物を確認するためのFFミラーだ。米ボーイング社や欧州エアバス社に納入、さらに世界100社以上のエアラインが採用しており、累計出荷枚数は40万枚を突破した。

2016年には重量は同じで面積が約3倍という新開発のFFミラーがエアバス社のA320neoという旅客機に採用された。航空機部品の重量制限は厳しいため、面積を拡大しても重くならないように工夫を積み重ねて開発した。

凸面タイプのミラーも製造しており、よく見かけるのはコンビニや書店などで天井近くに設置される万引き防止や接客向上用。室内通路の衝突防止や、病院・介護施設での見守り、学校、図書館、工場、倉庫などの安全対策でも使われている。

要するに、自分を見る鏡や道路上の交通用鏡を除けば、コミー製ミラーが市場を席巻していると言ってよい。コンビニ用ミラーではシェアは約8割に達する。

次々と新製品も開発しており、例えば、2014年に発表した「CC(キャビン・クルー)ミラー」は、エアラインの客室乗務員専用のミラーだ。3×5センチで厚さ2ミリという小型のミラーで、搭載機器のチェックや化粧直しなどに重宝されている。